「最低限の目標はクリア」

 「最後まで難航したのが気候変動を巡る調整。一時は首脳宣言を見送る可能性もあり、首相自ら調整に乗り出してまとめた。全体として、最低限の目標はクリアできたと思う」。政府関係者はサミットの成果をこう評する。

 「日本は議長として、各国間の対立を際立たせるのではなく共通点、一致点に光を当てていくことに力を入れた」

 サミット終了後の記者会見。安倍首相は議長としての自らの役割をこう強調してみせた。

 また、世界が注目した米国のトランプ大統領と中国の習国家主席との会談では5月を最後に中断していた貿易協議の再開で合意。米国は3000億ドル(約33兆円)分の中国製品への追加関税を先送りし、米企業による中国の情報通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への部品販売を容認する考えも示した。

 米中の貿易戦争の激化は一時休戦となり、米中双方のトップに自制と前向きな取り組みを直接促してきた安倍首相は周辺に「一定の橋渡し役をできたのは良かった」と漏らす。

 もっとも、相変わらず予測不能のトランプ大統領の言動には安倍首相も振り回された。政府関係者によると、トランプ大統領が28日の首脳会談直前に日米安全保障条約への不満を表明したため、安倍首相は相当身構えながら首脳会談に臨んだという。

 さすがのトランプ大統領もこのタイミングで安倍首相のメンツをつぶすようなことは避けようとしたのだろう、会談でこの問題は突っ込んだ議論にはならなかった。とはいえ、トランプ大統領は29日の記者会見で「不公平な合意だ。米国の離脱は全く考えていないが、これは変えなければいけないと安倍首相に言った」と表明した。

 政府内ではトランプ大統領の発言は来年の大統領選をにらみ、「日本に対する農業分野での関税引き下げ要求を実現するためのカードとする狙いがあるのでは」と警戒感が広がっている。

 先のトランプ大統領との直談判で日米貿易協議の詰めの議論を参院選後に先送りさせた安倍首相。親密な関係を背景に参院選への影響を食い止めようという狙いはここまである程度順調と言えるが、先行きには懸念材料が待ち受ける。

 通常国会への対決法案の提出を避け、国会審議を平穏なものにする。改元に伴う政治休戦を挟み、衆院の解散風を吹かせることで与党陣営を引き締め、野党をかく乱させる。そしてG20サミットという晴れの舞台で外交力と存在感をアピールし、参院選になだれ込む――。

 野党の国会戦術のまずさもあり、ここまでほぼ自らの描いたシナリオ通りに事を運んできた安倍首相。12年の衆院選から続く国政選挙の連勝を再びたぐり寄せるのか、それとも野党が巻き返すのか。夏の政治決戦が始まる。

■修正履歴
2ページ目で「300億ドル」としておりましたが「3000億ドル」の誤りでした。お詫びして訂正します。 [2019/7/1 19:15]

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