
6月28日、安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領による首脳会談が行われた。トランプ氏は日米同盟に対する不満を口にすることはなく、両首脳は日米同盟を一層強化することで一致した。
今週、同大統領の発言に日本の外交・防衛関係者は肝を冷やした。6月24日には、米ブルームバーグ通信が「トランプ大統領が最近、側近との会話で『日米同盟の破棄』に言及した」と報じた。有識者が、破棄など「あり得ない」(藤崎一郎・中曽根平和研究所理事長)(関連記事「専門家が読む『トランプ氏が日米同盟離脱を検討』報道」)と分析する中、27日には、米FOXニュースによる同大統領へのインタビューが追い打ちをかけた。
「日本が攻撃されれば米国は彼らを守るために戦うが、米国が攻撃を受けても日本は私たちを助ける必要が全くない」と不満を語ったのだ。「日本が攻撃されれば、米国は第3次世界大戦を戦う」と日米同盟の堅持を明言したものの、前段の発言に人々の興味は引き付けられた。
それゆえ、日米首脳会談でトランプ大統領が不満をあらわにしなかったことで、胸をなでおろした向きが多い。ただし、これで事が収まるとは限らない。2020年の米大統領選が近づくにつれ、この問題が再燃する可能性は小さくない。
そのとき、日本はどうするか。
費用負担の増額は日本の国益に沿うか
米国が攻撃を受けたときに日本が米国を守れるようにし、トランプ大統領の不満を直接的に解消するには、集団的自衛権を限定なく行使できるようにする必要がある。しかし、それには憲法9条の制約がある。改憲は、国民感情の点からも、大統領選までに残された時間の点からも現実的ではない。
次に考えられるのは、在日米軍の駐留経費の負担を日本が増やすことだ。トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)に加盟する諸国に、GDP(国内総生産)比2%に防衛費を引き上げるよう求めている。これを先取りする策だ。
米国の在日米軍駐留経費は2017年の時点で約48億ドル(約5200億円)。日本がこれを全額負担しても、GDP比約0.1%の負担増ですむ。NATO諸国が負う負担よりも小さな負担で済むわけだ。
ただし、防衛大学校の武田康裕教授は「日本の国益にかなうとはいえない」と疑問を示す。米国が日本に提供する「核の傘」をはじめとする拡大抑止の信頼性が揺らいでいるからだ。「日本の有事には、米軍は本当に来援してくれるのか」との懸念が消え去らない。
例えば尖閣諸島の防衛について、米国内にはかねて「日本の無人島を守るために、米国の若者の血を流す必要があるのか」との議論がある。米国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領になったことで、この懸念に拍車がかかった。同大統領は2018年12月、「米国は世界の警察であり続けることはできない」と明言している。
米軍の来援が不透明な状況で、日本が負担するコストのみを拡大することが適切かどうか深く考察する必要がある。
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