大戸屋ホールディングス(HD)は26日、東京都内で定時株主総会を開いた。株主からの声で目立ったのが、今年2月に問題が発覚した不適切動画についての発言だ。

東京都内で開かれた大戸屋ホールディングスの株主総会では2月に発覚した「バイトテロ」についての意見も出た
東京都内で開かれた大戸屋ホールディングスの株主総会では2月に発覚した「バイトテロ」についての意見も出た

 動画は、大戸屋の従業員が店舗内で配膳用トレーを使ってふざける様子などが撮影されたもの。従業員がSNS(交流サイト)に投稿し、今年2月に問題が表面化した。窪田健一社長は株主総会で陳謝したうえで、「従業員に対して積極的に研修を実施している」と説明した。

 大戸屋HDは問題発覚後、従業員3人を退職処分にし、窪田社長を含む常勤取締役5人の月額報酬額の10%を減給とした。さらに3月12日には国内店舗を一斉休業し、店内の清掃や従業員研修を実施。清掃活動には役員も参加し、研修では食材の取り扱い方やSNSの使い方などを指導した。「4月以降も役員、本部社員による清掃を実施している」(窪田社長)という。

 だが、株主の信頼を完全に回復するまでには至っていないようだ。業績の落ち込みが続いているためだ。従業員による不適切動画の投稿は確かに問題だが、大戸屋が置かれた厳しい状況の一端を映し出したにすぎないとも言える。

 不適切動画の問題が表面化した直後の19年3月の既存店売上高は前年同月比7.5%減。大戸屋HDの19年3月期の売上高は前の期比2%減の約257億円、当期純利益は同73%減の5500万円に終わった。

 既存店売上高は4月が同5.0%減、5月は同2.7%減とじわじわと回復しているものの、影響はまだ残っている。総会でも株主から「2月の不祥事以降、既存店の売上高が落ち込んでいる」「4月に店舗に行ったが、接客が良いとは言えなかった」といった指摘が飛んだ。

 大戸屋HDは販促の支援をするとともに、従業員の研修を徹底して顧客からの信頼回復を図るとしているが、短期的な売り上げの回復につながるかは不透明だ。多くの外食企業と同様、人件費の高騰は深刻で、今年4月には人件費と原材料費の上昇を理由に定食メニュー12品目を値上げした。

 大戸屋HDは、テーブルの上に置いたタブレット端末から注文できる店舗を増やしていくとともに、セルフレジの試験導入にも取り組み、人件費上昇の影響を抑える考え。従業員の負担を減らすため、より軽い皿の使用も検討しているという。

 ただ、今年10月には消費増税も控えている。軽減税率の適用を受ける食料品が8%で据え置かれる一方、外食は10%となり、消費者の「外食離れ」が進む可能性もある。大戸屋HDが失った顧客を取り戻すのは容易ではなさそうだ。

(写真:共同通信)
(写真:共同通信)
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