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 日産自動車は25日、横浜市内で定時株主総会を開催し、コーポレートガバナンスを強化するための指名委員会等設置会社への移行や西川広人社長らの取締役再任などを決議した。約3時間半に及んだ総会の株主発言で目立ったのは「西川社長、頑張って」との声。背景にあるのは日産の43%の株式を握り影響力行使を強める仏ルノーに対する、その他の株主の反発。「ルノー対その他」の構図が浮き上がった。

 株主による議案提出や西川氏の解任動議など波乱含みだった日産の株主総会。その中で一段とボルテージが上がったのが、ある株主からルノー会長で日産取締役のジャンドミニク・スナール氏への質問だった。「4月の臨時株主総会であなたは『献身的に日産のために取り組み、従業員と業績のために貢献する』と話した。だが、実際の行動は違うのではないか。フランス人は表面が穏やかでも、よくも悪くも狡猾(こうかつ)な人が多い」

 経営の独立性を保ちたい日産と、日産への影響力を強めたいルノー。資本の上では、ルノーは日産の43%の株式を持つ圧倒的な存在だ。昨年11月に逮捕されたカルロス・ゴーン氏に代わってルノー会長に就いたスナール氏は「(ルノー筆頭株主の)仏政府が後見人」(関係者)。そして、ここ数カ月、日産とルノーとの関係は以前より緊迫感が増している。

 まず、ゴーン氏らを取締役から解任した日産臨時株主総会後の4月中旬。ルノーは日産に対して改めて経営統合を持ちかけ、日産はこれを拒否した。5月下旬には、ルノーがフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)から受けた経営統合の提案に関し、日産には事前に知らされていなかったことが判明。日産が警戒感を示したことが一因となり、FCAは統合案を取り下げた。

 そして6月上旬、スナール氏は日産に宛てた書簡で、新たに設置する委員会の人事にルノーの意見が反映されなければ、株主総会の一部議案に賛成しない意向を示した。質問した株主が「あなたの日産の取締役としてのミッションは何か。ルノー会長としてではなく、日産の取締役の責任を果たせるのか」と声を張り上げると、会場からは拍手も湧いた。

 スナール氏は「私は4月の時点と何も変わっていない。アライアンスの円滑化に向けて取り組んできた。日産の誇りを保つため、日産の会長になることも諦めた」と話した。FCAとの統合交渉については「日産にも大きなメリットがあった」と指摘。日産のガバナンス改革には「反対はしていない」と強調し、ルノー取締役会の日産出身者が委員会メンバーであることから「平等な形をお願いしただけだ」と述べた。

 「攻撃的にしようというつもりはないので、信じてほしい。全く悪い意図はない」と臨時株主総会時と同様の「紳士」ぶりをアピールしたスナール氏だったが、今総会では、その発言を真に受ける空気はあまりなかった。会場にいた75歳の男性株主は「フランスはしつこい。西川さんに頑張ってもらわないと」と話した。

 ゴーン氏の全盛期に代表取締役だった西川氏らの責任を問う声は根強くある。ただ、対ルノーとなった瞬間、日産の他の株主は団結するようだ。西川氏は総会で、「(スナール氏などルノー出身者との)利害が対立する場合には(取締役会で)議題から外れてもらう」と指摘した上で「スナール氏はまさしく日産の取締役として行動する」と言い切った。こちらの発言の信ぴょう性は、今後の結果が証明することになる。

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