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 経営難に陥っていたシステム大手のワークスアプリケーションズの再建策が固まった。6月21日、会社分割をした上で、収益源の人事システムなどHR事業を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡すると発表した。譲渡金額は約1000億円とみられる。年明けからの身売り交渉では「買収総額が500億円いけば御の字」(交渉関係者)ともされていただけに、ワークスアプリにとってはまさに「首の皮一枚からの大逆転」となった。

年明けから身売り交渉を進めていた(写真はワークスアプリケーションズの本社が入る都内のビル)

 AI(人工知能)を搭載した統合基幹業務システム(ERP)「HUE(ヒュー)」の開発費用や、積極的な人材採用による人件費の増大があだとなり業績悪化が続いていたワークスアプリ。2018年6月期の最終赤字額は170億円に膨らみ、純資産額も30億円ちょっとに減少。債務超過スレスレの「危険水準」に陥っていた。

 当初、会社を丸ごと買収してくれる候補を国内外で探したが、収益回復シナリオが見えにくい中で交渉は難航。春頃にようやく「海外企業と500億~600億円規模で交渉がまとまりかけた」(交渉関係者)ものの最終局面で頓挫した。

 19年6月期の業績見通しも楽観できる状況にはなく、「手元資金は今夏で枯渇しそう」(金融機関交渉者)との声も上がる中、交渉は時間との戦いとささやかれていた。そこで浮上したのが会社分割案だ。

 安定して収益を稼げるHR事業だけ切り出せば買い手は現れるはず──。ワークスアプリからすると安定的に利益を出してくれる「キャッシュカウ」を失うことになるが、「HR事業なら」と、ベインキャピタルをはじめ国内外の投資ファンドが買収に手を挙げ、短期決戦の交渉が急ピッチで進められた。

 最終的に海外大手ファンド同士の一騎打ちとなり、買収価格は最終局面で一気に跳ね上がった。そして牧野正幸CEO(最高経営責任者)にとっては望外とも言える1000億円でベインキャピタルが買収することになった。

残された事業をどう収益化するか

 年明けから行われていた身売り交渉では「(200億円以上の負債を含めた)買収総額が500億円いけば御の字」(交渉関係者)とされていただけに、牧野CEOが一番胸をなでおろしているかもしれない。大赤字の元凶ともされるHUEを今後どう収益化していくかなどの課題は残るが、1000億円の資金が入れば「当面は大丈夫だろう」との見方も出てくる。

 ワークスアプリは11年にポラリス・キャピタル・グループと組んでMBO(経営陣が参加する買収)を実施、上場を廃止した。その後、牧野CEOは17年の再上場を目指したが、業績の悪化もあり上場計画は頓挫、収益は悪化の一途をたどっていた。そして企業として存続が危ぶまれるまでに追い込まれた今年、土壇場で1000億円の売却資金を手に入れる大逆転に成功した。

 もっとも、1000億円が自由に使えるとは限らない。実は今回の身売り話を主導したのは、ポラリスが株を手放した後に6割超の株を持つ筆頭株主となったファンド「ACAグループ」。これまで収益悪化で煮え湯を飲まされてきた彼ら株主から「1000億円入ったなら配当すべきだ」と言われるのはほぼ確実だからだ。

 とはいえ窮地から息を吹き返したワークスアプリ。これを復活ののろしにできるかどうかは牧野CEOの手腕にかかっている。

 
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