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 ビジネス対話アプリ「Slack」を手掛ける米スラック・テクノロジーズが20日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。注目されたのは昨年のスポティファイに続き「直接上場(ダイレクトリスティング)」という手法を用いたこと。直接上場とはどのようなものなのか。

スラックは20日、ニューヨーク証券取引所に上場した(写真:UPI/アフロ)

 スラックのニューヨーク証券取引所での初値は38.50ドルだった。参考価格の26ドルを大きく上回り、一時は42ドルまで上昇し、終値は38.62ドル。時価総額は195億ドル(約2兆930億円)となった。

 「直接上場」とは、上場時に新株を発行せず、既存の株式だけを上場する手法だ。

 一般的に、株式を上場する際には新株を発行する。企業が新たな資金を調達するために上場することが多いからだ。証券会社は新株発行の手続きに加え、既存株式を引き受けて販売。上場前に証券会社が投資家のニーズを見極める過程で、公開価格が決定する。

 直接上場の場合、こうした手続きを証券会社に依頼しないため、手数料が抑えられるのが利点だ。だが一方で、「株価の目安となる公開価格がないので、株価が乱高下したり安定しづらかったりする可能性がある」(大和総研の太田珠美主任研究員)。

 資金調達が目的でない場合、上場は既存株主が保有株を時価で売り出すことが目的となる。だが、上場前に買い手がどれだけいるのか分からず、株を売り出したい既存株主にとってはいくらで売れるのか分からないというデメリットがある。

 そのため、この手法は「買い手がたくさんいて、株式が流通するという自信がないとできない」(太田主任研究員)。知名度が低ければ上場しても流通株式が少ない可能性は高い。

 日本取引所グループによると、直接上場と一般的なIPO(新規株式公開)で、株主数などの審査基準に違いはない。上場審査に必要な書類のうち、「公募または売り出し予定書」などの新株発行に伴う書類がないだけだという。

 日本では広がるのか。米国では未公開株を機関投資家が保有し、取引する事例があり、一定程度の価格の目安があるが、日本ではあまりない。また、個人投資家が買いたくなる知名度のある未上場企業も少なく、広がりは少なそうだ。

 日本取引所グループによると、1999年以降日本で直接上場したのは、同年上場の杏林製薬のみ。同社は当時の背景について「創業家が株を保有していたが、市場を通じて放出したいという意思から上場した。一方で資金需要はなく、新株発行の必要がなかった」と説明する。同社はその後、現在に至るまで増資していないという。

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