「A350は日本の空を変える旅客機だ」――。

 日本航空(JAL)が2019年9月から羽田―福岡で運航する欧州エアバスの大型旅客機「A350-900」の客室などを報道陣に公開したイベントの席上、赤坂祐二社長はそう高らかに宣言した。

JALが9月から就航を予定するA350-900

 これまで主にボーイングの旅客機を導入してきたJALが、エアバスの大型旅客機を導入するのは今回が初めて。369席を備えた機体には、JALを象徴する鶴丸と「A350」と書かれた赤い文字が浮かぶ。赤坂社長は初号機を背に、従来よりも柔らかなクッションを採用したファーストクラスの座席や、全席に導入したモニター画面やUSB電源など、利用客の快適性を追求した初号機に自信を見せた。

全席にモニターを備えたA350の客室

 だが、JALが目指すA350導入の効果は、客室の快適性向上による利用客の取り込みだけではない。

 機体が軽量化されたことなどに伴う燃料費の削減だ。JALは更新時期を迎えるボーイング777の後継機としてA350-900を採用するが、エアバスはA350の燃費が全世代機よりも25%優れているとしている。赤坂社長は「我々の試算では国内線で1機飛ばすと年間で約2億円のコスト削減ができる。仮に10機を導入すれば20億円の節減につながる」と説明する。JALの19年3月期の連結決算では燃油費が2512億円と営業費用全体の約2割を占めており、燃費向上の効果は小さくない。

 ではA350はどのようにして燃費効率を上げたのか。一役買っているのが帝人が炭素繊維を樹脂と合わせるなどして開発した「テナックスTPCL」だ。軽くて高い強度を持つ炭素繊維は近年、航空機での採用が増えてきている。同社によると、テナックスTPCLは2014年5月にA350向けの構造材として採用され、機体の各部分をつなぎとめる部品として使用されている。従来のスチールの部品と比べて重さを4分の1程度に抑えており、1機当たり数千個単位で使用していることから機体の軽量化に寄与、燃費効率の改善につながっているのだという。

A350に使用されている帝人の「テナックスTPCL」

 帝人コーポレートコミュニケーション部の齋藤奈々氏は「これまでもA350にテナックスTPCLは使われてきたが、国内航空会社の路線に使用されることは感慨深いものがある」と話す。

 JALは今回導入した標準型のA350-900と長胴型のA350-1000を合わせて最大56機導入する予定。羽田ー福岡に続き、羽田―那覇などまずは国内線の中でも利用者の多い「幹線」で導入し、国際線への投入も視野に入れる。経費節減にもつながるという武器を手に、JALはLCCを含めたライバルがひしめく日本の空を変えられるか。

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