LIXILが株主に送付した「当社委任状による議決権行使のお願い」
LIXILが株主に送付した「当社委任状による議決権行使のお願い」
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 6月25日に迫るLIXILグループの定時株主総会について、会社側と、前CEO(最高経営責任者)の瀬戸欣哉氏側が、「票集め」を巡り激しい攻防を繰り広げている。LIXILの株主総会では、会社側と前CEOの瀬戸氏が、それぞれ独自の取締役候補を提案して株主からの支持を競い合う構図になっている。瀬戸氏は昨年10月末にCEOを解任されたが、当時、取締役会議長だった潮田洋一郎氏(現・会長兼CEO)が主導した解任プロセスがコーポレート・ガバナンス(企業統治)の観点から不適切だったと反発している。

 会社側は瀬戸氏側の株主提案を否決させようと、株主に対して議決権行使の委任状を会社に送付するよう勧誘している。瀬戸氏側はこの勧誘手法が違法行為に当たるとして、同社の代表執行役である山梨広一社長兼COO(最高執行責任者)を相手に、東京地方裁判所に差し止めの仮処分を申し立てていた。東京地裁は20日、この申し立てを却下したが、瀬戸氏側は即時抗告し、徹底的に争う構えだ。

 株主総会の議案は、会社側の独自候補が第1号、会社側と瀬戸氏側の共通候補が第2号、瀬戸氏側の独自候補が第3号となっている。今回、瀬戸氏側が問題視しているのは、委任状と未記入の議決権行使書の取り扱い方についてだ。

「委任状の記入方法・返信方法」で委任状や未記入の議決権行使書の取り扱いについて記載しているが、瀬戸氏側は「違法」だとして問題視した
「委任状の記入方法・返信方法」で委任状や未記入の議決権行使書の取り扱いについて記載しているが、瀬戸氏側は「違法」だとして問題視した
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 まず、委任状については、会社側は株主に対して、会社提案に賛成(第1号・第2号議案に賛成、第3号議案に反対)と記入するように株主に求めている。その上で、「当社による勧誘の趣旨に合致しない委任状については、当社としてお取り扱いいたしかねますので、予めご了承ください」としている。

 つまり、仮に株主から、瀬戸氏側の株主提案に賛成(第1号議案に反対、第2号・第3号議案に賛成)する内容の委任状が届いても取り扱わないということになる。瀬戸氏側はこれについて、「注意書きが記載されてはいるものの、小さくて分かりにくく、委任状のみで議決権を行使できると誤解させる」などとし、会社側の「勧誘の趣旨に合わない委任状を取り扱わない」という方針をやめるように求めた。

 次に問題視したのが、未記入の議決権行使書の取り扱いだ。会社側は委任状とともに未記入の議決権行使書を送付するよう、株主に求めている。会社側は未記入の議決権行使書が届いた場合、会社側の提案に賛成しているものとして取り扱うとしていた。議決権行使書には「(ご注意)」として、「各議案につき賛否の表示の無い場合は、第1号議案および第2号議案については賛成、第3号議案については反対の意思表示があったものとしてお取り扱いいたします」と記載してある。

 これに従えば、株主が委任状に瀬戸氏側の株主提案に賛成と記入し、その委任状とともに未記入の議決権行使書を会社側に送付してしまった場合でも、会社側は株主の意図とは逆に、会社提案に賛成として取り扱うことができる。瀬戸氏側は、「委任状と未記入の議決権行使書を両方提出するように誘導しておいて、委任状で会社提案に反対している場合でも、賛成として取り扱うとしているのは、明らかに不公正だ」と主張。こうした扱いをしないように求めていた。

 瀬戸氏側によれば、未記入の議決権行使書の取り扱いについては、会社側は仮処分手続きの中で、株主提案に賛成と記載された委任状と同時に返送された場合、原則としてこれを会社提案に賛成として扱うことはないと、書面で認めたという。ただ、東京地裁は会社側のやり方は違法とは言えないと判断し、仮処分の申し立てを却下した。LIXIL広報部は「申し立てが却下されたことは認識している。委任状などは法令に従い適切に取り扱っている」とコメントした。

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