世界的な大学評価機関の英クアクアレリ・シモンズは6月19日、2020年版の世界大学ランキングを発表した。トップは米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)で、以下、スタンフォード大学、ハーバード大学、英オックスフォード大学、カリフォルニア工科大学の順で続く。例年通り、米国の大学の国際競争力の高さが目立つなか、日本のトップである東京大学は22位と過去最高の順位を記録した。

東大は16年に39位まで落ち、京都大学にも抜かれていたが、17年以降は順位を上げ続けている。アジアではシンガポールや中国の大学の競争力向上が目立ち、日本の大学の地位低下を指摘する声も多い。「意外」にも思える東大の健闘の背景には、学術研究という大学の足腰ともいえる領域の強さがあった。
東大は「学術への評判」のスコアで100点満点を獲得した。満点は世界でもMITやスタンフォード大など8校にとどまる。アジアの大学では唯一だ。15年に東大が掲げた「東京大学ビジョン2020」ではビジョンの1番目に「新たな価値創造に挑む学術の戦略的展開」を挙げ、研究拠点の拡充や教員が研究に専念できる時間の確保、研究者雇用制度の改革で国内外からの多様な人材の獲得に取り組むとしてきた。
実際に研究拠点の拡充では17年に医学や生物学のほか理論物理学、言語学など様々な分野の国内外の研究者が参加する脳科学の国際的な研究拠点「ニューロインテリジェンス国際研究機構」を立ち上げた。人材の獲得では若手研究者のポストを15年度の16から17年度に172まで増やし、20年度までには300までにするなど、学術分野の強化で着々と手を打っている。こうした点が評価につながったとみられる。
一方で劣るのが国際性だ。国際学部の充実度を示すスコアは100点満点中11.1点、留学生の多さを示すスコアは同26.2点にとどまる。欧米の大学はもちろん、総合ランキングで11位に入ったシンガポールの南洋工科大学やシンガポール国立大学、16位の中国・清華大学、22位で東大に並ぶ北京大学にも国際性では劣っている。それだけに、東大の国際競争力向上に向けた課題は明らかともいえる。
国際性で劣るのは東大に限らずランキングに入った日本の大学に共通の要素だ。ランクインした41校のうち32校が留学生比率の評価を落とし、34校で外国人教員比率のスコアが低下した。学術領域という基礎的な分野は世界でも高い評価を得ながら、国際性で劣るというのは、世界で3位の経済力を有しながら、移民をはじめとする海外人材の活用には積極的になれない日本の縮図といえる。日本社会が外に開けば、おのずと大学の国際競争力も上がるのかもしれない。
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