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(写真:西村尚己/アフロ)

 投資用アパートの施工、管理を主力事業にする東証1部上場のTATERUに対し、国土交通省は業務停止命令を出す方針を固めた。期間は未定。命令は、18年8月にアパート購入希望者が融資を受けやすいよう、社員が融資資料を改ざんしていたことが発覚した問題を受けたものだ。会社が設置した調査委員会の発表では、不正件数は350件とされ、組織ぐるみの関与も指摘されている。

 不正が発覚して以降、イメージ悪化や広告宣伝自粛の影響もあって、同社の業績は大きく落ち込んでいる。2019年1~3月期の当期純利益は60億円の赤字(前年同期は4億3300万円の黒字)だった。コスト削減や投資用不動産の在庫圧縮、子会社売却などで手は打っているが、その後も回復の兆しがまったく見えないのが現状だ。「これでさらに業務停止となれば、経営体力が持つのか」業界内ではこのような声も聞こえ始めた。

 TATERUの施工するアパート、TATERU Apartmentは、IoTテクノロジーを標榜している。シリンダー錠を使わないスマートロック、タブレット型端末による室内の空調や家電の操作などが売りだ。しかし「IoT設備の面では確かに業界最先端かもしれない。だが、設備が新しい分、賃料を相場より高く設定せざるを得ない」。TATERU Apartmentを2棟保有する埼玉県在住のあるオーナーは嘆く。「高い家賃払ってスマートロック使いたい人がどれだけいるか。IoTといっても、劇的に利便性が高くなるわけではない。シリンダー錠でもそんなに困らないでしょ」

社名に「クラウド」付けたら売れ始めた

 もともと同社はサービスの新しさ、斬新さを呼び水に成長を追求してきた。TATERUの源流は、2006年1月に創業された「フルキ建設」。古木大咲社長の名前から取ったようだ。

 その後、1年もたたずに社名を「インベスターズ」に変更する。当時の不動産市場は、リーマン・ショック前のプチバブル状態で、価格は上昇していた。付加価値の高いデザイナーズマンションの企画、設計、販売を手掛け、富裕層の需要を獲得していった。「おしゃれなイメージを出したかったに違いない」。ある不動産関係者はこう語る。

 14年に金融商品取引法改正でクラウドファンディングが解禁されると、今度は社名を「インベスターズクラウド」へと変更している。専用のアプリを使えばオンライン上で物件探しやアパート建設についてチャットで相談ができるなど、どこにいてもワンストップでアパート経営ができるとうたった。

 16年には「10万円から始められる不動産投資」として、不動産投資型クラウドファンディングのプラットフォーム提供と、事業を拡大していった。「富裕層にアパート経営を勧めるのはよくあるビジネスだけど、クラウドという名前が付いてから、販売が劇的に伸び始めた印象がある」。前出の不動産関係者は当時の様子をこう振り返る。

 現在の社名であるTATERUに落ち着いたのは18年4月。ブランド統一のため、サービス名の「TATERU」を社名に据えたと会社側は説明している。だが皮肉にもこの年、不正融資が発覚する。不正の背景には、社員に対する過大なノルマもあったと調査委員会の報告書には書かれていた。同社は「新しさ」を打ち出すために社名を何度も変更してきたが、それだけで業績を伸ばし続けることには限界があったのだろう。

 スルガ銀行の不適切融資やレオパレス21の施工不良問題、住宅ローン「フラット35」を巡る不正利用など、不動産・建設関連の不祥事が後を絶たない。金融緩和に端を発したカネ余り、そして低金利が、比較的利回りの高い不動産市場に資金を集める状況を生んだ。TATERUもそのような環境の中で急成長してきた1社だった。この先、業務停止が解け、仮に4度目の社名変更をしたとしても、失った信用を取り戻すのは容易ではないだろう。

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