政府は6月21日、「統合イノベーション戦略」を閣議決定した。同戦略の中でAI(人工知能)と並んで幅広い業界に影響が及びそうな分野がバイオだ。政府が「バイオ戦略」を策定するのは11年ぶり。十分な成果をあげたとは言い難い過去の反省に立って、今回は新産業創出に結び付けられるだろうか。

今回のバイオ戦略では「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」するとの目標を打ち出した。今後、政府の成長戦略や各省庁の来年度以降の施策などに反映されることになる。ちなみに「バイオエコノミー」とは、バイオテクノロジーや再生可能な生物資源などを利活用しながら、持続可能な循環型社会を実現していこうという概念で、世界各国がその振興策を打ち出している。
政府はバイオ産業の振興策となるバイオ戦略を、02年と08年にも策定している。ただ、これまではバイオ戦略を策定しても、産学官が継続して関与することがなく、大学などのシーズ発の思考に偏重し、かつ、投資すべき対象が総花的であったことなどから、十分な成果が出ていなかった。
今回はこうした過去の反省に立ち、10年後に目指すべき社会像と市場領域を設定して、それを実現するのに必要な技術開発の支援策や、規制緩和、標準化などの施策をロードマップとして示していくことを目指していた。
もっとも今年2月にバイオ戦略有識者会議を設置して検討を進めてきたものの、ロードマップの策定は時間切れで19年度末までに先送り。健康・医療から農林水産業、食品、工業分野まで幅広い領域にまたがるバイオ関連産業の中で、どの市場領域の振興を図るのかについて、9つの市場領域を決定するにとどまった。
決定した市場領域は、①高機能バイオ素材②バイオプラスチック③持続的一次生産システム④有機廃棄物・有機排水処理⑤生活習慣改善ヘルスケア、機能性食品、デジタルヘルス⑥バイオ医薬品・再生医療・細胞治療・遺伝子治療関連産業⑦バイオ生産システム⑧バイオ関連分析・測定・実験システム⑨木材活用大型建築、スマート林業──の9つ。
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