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 政府が近年、最も力を入れている分野の1つが「働き方改革」だろう。2018年には働き方改革関連法が成立。いわゆるブラック企業を許さない姿勢を鮮明に打ち出してきた。ところが自民党行政改革推進本部がこのほどまとめた提言が指摘するところは、要するにこうだ。

 政府省庁こそ、ブラック職場ではないか――。

 提言は、「霞が関の政策立案部署等の業務量調査結果と今後の対応」と題されたもの。これに先立つ2018年に「霞が関国家公務員労働組合共闘会議」がまとめた調査では、1カ月当たりの残業時間の長さを問題視した。中でも「働き方改革」を管掌する厚生労働省が53.8時間と最も長く、同省の職員からは「実態はもっと過酷で過労死ラインを超える月も少なくない」との声も出ていた。これを受けて改めて実態を調査してまとめたのが今回の提言だ。6月18日夕方に、この内容について自民党が記者向けブリーフィングを開く。

霞が関には夜でも煌々と明かりがともる(写真:PIXTA)

 提言は「ほとんどの省庁において、かなりの超過勤務が常態化している」と結論。さらに「省庁間での業務量の跛行性(記者注:つりあいが取れていない状態)が大きいのみならず、職員1人当たりのワークロードとも言える、一定定員当たりの業務量のばらつきが、国会対応、政省令対応、予算執行対応、審議会対応、訴訟対応、など、相当の負担を伴う業務において、省庁間で桁が異なるほどの顕著な差異が生じている」と指摘した。

 超過勤務の現状を解消するために人員の適切な配置など業務改革を進めてきたとするが、これに対しては「今日的課題に対する解決能力が不十分なままで来てしまっている」と評価しない。

 そこで自民党行革本部が政府に対して求めているのが、内閣官房のトップに民間人を置いて強力なトップダウンにより「業務の抜本的見直し」を進める「推進チーム」の設置だ。

 推進チームを司令塔として業務の根本的見直しに関する全省庁共通のルールを策定。このルールに基づいて、最新システムやBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)などの手法を導入して「霞が関の生産性革命」の実現に踏み出す。そうしたソリューションを導入・調達するために「デジタル政府庁」を設置する、というところまで提言している。

 強い問題意識による力強い提言だ。だが、新たな仕組みを導入するだけで効果を生み出せるかは未知数だろう。

 そもそも官公庁は民間企業と異なり、業務の効率化に対するインセンティブが小さい。

 例えば、業務効率を大幅に改善し、残業時間が減ったとしよう。民間企業であればこれまでコストとしてかかっていた残業代がそのまま利益に転じる。しかし官公庁では「残業手当のための予算」があるため、各部局からすると、使い切らなければ次年度からその予算を削られかねない。業務量や残業時間は減らしたくないという逆インセンティブすら働きかねないのだ。

 「売上高の獲得」や「利益の確保」という概念がなく、「予算の配分」しかない政府という組織が抱える構造的な問題と言える。

 このような前提があるからこそ、「霞が関」の働き方改革は進んでこなかった。民間企業から遅れて、ようやく始まりの兆しを見せる「ブラック省庁」の働き方改革。民間企業との差が広がれば、それだけ優秀な人材の確保も難しくなる。国の中枢機能を担うだけに、早期の改善が必要だが、その道のりは険しい。

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