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 高齢者による悲惨な事故が連日報道される中、多くの高齢ドライバーやその家族が運転免許の返納を検討するようになっている。2018年に運転免許を自主返納した人数は、10年前から約8倍近く増え、42万1000人にのぼった。

 一方で自動車が日常の大切な移動手段になっているため、免許の返納に踏み切れないという人も多い。実際に免許を返納して車のない生活を送るためには、新しい移動手段が必要になる。

 移動手段の一つとして選択肢になり得るのが「電動車いす」だ。電動車いすは大きく2つの形に分けられる。「車いす」と聞いて一般的に連想されるジョイスティックで操作するタイプと、「シニアカー」や「電動カート」などと呼ばれる原付きバイクに似た形状のハンドルがついたタイプだ。いずれも道路交通法上では歩行者と同じ扱いであるため、免許は不要。時速1~6キロメートルで走行し、機種によってはフル充電で最大30キロメートル程度の連続走行ができる。

 価格は30万円から45万円ほど。免許返納後に取得できる「運転経歴証明書」を提示すると、購入時に特典が受けられるとする販売店もある。また、足腰が悪く要介護認定を受けた人などは、介護保険サービスを利用して月3000円程度でレンタルすることもできる。「セニアカー」という名称で電動車いすを製造・販売しているスズキによると、「免許返納を検討した購入や問い合わせが増えてきている」(同社広報)と言う。

スズキが製造・販売しているセニアカー

 これまでは福祉用具の販売店などで電動車いすを購入する人が多かったが、意外な場所でも販売されるようになってきた。

 マツダ車を販売する大阪マツダ販売(大阪市)は5月、WHILL(ウィル・横浜市)の電動車いすの販売を始めた。車の所有と利用の意識が変化するなかで、カーディーラーを取り巻く環境は厳しい。生き残りをかけ、他のディーラーとは異なる価値を提供するために電動車いすの取り扱いを決めたという。

大阪マツダ販売はWHILLの電動車いすの取り扱いを始めた

 同社の左近克美執行役員は「懇意のお客様の家族から、免許返納について相談を受けたという現場の声を聞いている」と話す。免許返納後の移動手段の提供にも前向きだ。