パナソニックは6月17日、ロボットシステムのソフトウェア開発を手掛けるリンクウィズ(静岡県浜松市)と資本業務提携を締結したと発表した。溶接事業はパナソニックが1957年から始めた歴史あるビジネス。モノづくりの現場を支える重要事業だが、今一つ、社外へのアピール力が弱い地味な存在だった。そんな事業に光を当てたのは、日本マイクロソフト会長から鳴り物入りで2017年にパナソニックに入った樋口泰行氏だ。

「溶接は脈々と続く不可欠な事業。ブレイクスルーする可能性を秘めている」
6月17日の会見に出席したパナソニックコネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長は、リンクウィズとの提携の狙いをこう説明した。
リンクウィズとは溶接事業の熱加工現場のソリューションを共同で開発する。具体的には、正しく適切な溶接がされた良品の3次元の形状を把握させたうえで、事前登録したデータと比較して可否検査を自動判定させる。パナソニックの溶接事業の現場の担当者は「これまではヒトが確認していたものが、自動で判断できるようになり所要時間が短縮される」と話す。
パナソニックによると、2018年度の同社の溶接事業の規模は17年度比で1.5倍に拡大。これまでは目立たなかった事業だが、樋口氏は「私たちのものづくりの知見を生かすことで、製造業のお客さまのお役に立てる」と強調する。
実は、樋口氏自身、1980年に松下電器産業(現パナソニック)に入社後、20代のときに熱加工溶接機械の設計者だった。「溶接事業の経験者として、(リンクウィズの製造現場を)見た瞬間、筋は悪くないと思った。それに社長の人となりも大きい」とみて、提携を決めたという。
樋口氏が17年から社長を務めるパナソニックコネクティッドソリューションズ社は企業向けシステムなどを手掛ける社内カンパニー。人手不足などを課題に抱える小売りや物流、製造現場で自動化を進めるソリューションを提供するビジネスを推進してきた。これまで日の当たらなかった溶接事業を掘り起こすのも、これまでの知見を生かせば、高い収益が見込めると判断したため。パナ再成長を託された「樋口改革」の秘策は、そんな地味でもすごい事業に光を当てるところにあるのかもしれない。
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