お試し期間を設けた2年目の改革

 この失敗を踏まえて20年6月に改めた内容が、解約できない期間を6カ月間に縮めたことと、上位機種を中心に契約前2週間のお試し期間を設けたことだった。お試し期間中はレンタルと同様に中古品の使用となり、価格も月額利用料の半額程度に過ぎなかったが、気に入らなければ2週間で終了することから「最低利用期間が1年間から6か月間に縮まっても、まだ長い」と思う利用者にも使いやすい仕組みとした。

 テコ入れ策は「予想以上」(マーケティング本部の山田毅本部長)の成果を出した。21年4月末のサブスクサービスとお試し期間の累計利用者は、サブスクサービスのみだった20年6月の20倍まで増加した。

 お試し期間の導入は新たな効果も生み出した。お試しで利用した人は、その後サブスクに移行した際の解約率が低い傾向にあることが分かってきたのだ。山田氏が「短い期間だけでもルンバのある暮らしを体験すれば、価値を分かってもらえることを確信した」というように、利用者が2週間で家庭に必要かどうかを見極められるようになったわけだ。

 月額のスマートプランでは新品のルンバを提供しているため、途中解約があってもその商品を別のサービス利用者に使い回すことはできず、アイロボット側のコストとなる。お試し期間の導入は、サービスの収益率向上にも寄与する形となったのだ。

国内市場には伸びしろがある

 そして3年目の今年、新たな一手として用意したのが、お試し期間の一律価格導入という「マイナーチェンジ」だった。お試しですら4000円以上かかっていた上位機種も出てきていた中で、消費者の「ルンバは高い」という心理をもう一段下げようという狙いだ。山田氏は「決して上位機種の利用を促そうというのではなく、その人の暮らしにあった1台を選んでほしいという考えがある」と説明。お試しからサブスクというスタイルをより一層浸透させたい考えだ。

新型コロナウイルスの流行で在宅時間が増え、アイロボット製品の需要が高まったという
新型コロナウイルスの流行で在宅時間が増え、アイロボット製品の需要が高まったという

 アイロボットジャパンによると、同社製品の世帯普及率は現在約7%まで伸びているが、23年までの目標とする10%とはまだ開きがある。インターネット調査会社のマイボイスコム(東京・千代田)が20年2月に実施した調査では、ロボット掃除機の所有率は8.9%にとどまっているものの、「利用したい」「まあ利用したい」との利用に前向きな回答は3割に上る。国内市場にまだ伸びしろはある。

 矢野経済研究所の調べによると、20年度のサブスクリプションサービスの国内市場規模は8759億円で、拡大すると予想されている。家電分野では、パナソニックが高級炊飯器のレンタルと銘柄米の定期配送などを月額3980円で提供するサービスを7月から始めるなど、買い切り型ではないサービスで需要喚起する新たな動きが出ている。

 新型コロナウイルスの流行に伴って家で過ごす時間が増え、アイロボットの20年の国内市場での収益は19年比で20%増えた。「割合で言うとサブスク利用よりも購入される利用者のほうがまだまだ多い」と山田氏は話すものの、高価なアイロボット製品のさらなる浸透には、手軽さをウリにしたサブスク利用の増加は欠かすことができない。今回のマイナーチェンジは、消費者にとっての同社製品への高い壁をさらに壊すことができるのか。アイロボットジャパンの挑戦は続く。

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