ソーセージを口に入れた瞬間、薫製の風味が広がり、肉のうまみを感じる――。レトルト食品の代名詞「ボンカレー」を手掛ける大塚食品が、6月18日に関東を中心に発売する「ゼロミート ソーセージタイプ」(120g、税別398円)。本物のソーセージと瓜二つだが、その名の通り、肉を一切使用していない。原料は大豆だ。

親会社の大塚ホールディングス傘下で、大豆製品を手掛ける欧州の食品子会社などが技術協力し、1年ほどかけて本物の肉とそん色ない味を再現した。大豆は、タンパク質を多く含み、糖分や脂質が少ない健康食材として人気が高く、この商品は通常のソーセージに比べて、脂質は5割、カロリーは3割少ない。
国内のソーセージの市場規模は、業務用と家庭用を合わせるとおよそ3500億円に達する。市場調査の結果、食事制限などで肉を食べることを我慢している層が約15%いることが分かった。そのうちの7割が、肉の代替商品を食べてみたいと回答。大塚食品は、肉を使わないソーセージの需要が国内で250億円ほどあると見ており、この分野のトップブランドを目指す。
同社は昨年11月、肉を使わないハンバーグタイプの商品も発売した。ただ、大豆の臭いが気になるという声が強かったため内容を大幅に見直し、6月18日から拡販を始める。
消費者の健康意識が高まり糖質制限をする人が増えているが、大塚食品新規事業企画部の嶋裕之部長は、「必要な炭水化物は摂取した上で、余分な炭水化物を植物性のタンパク質や脂質に置き換えた場合、死亡リスクが低下し、動物性に置き換えた場合には逆にリスクは高まるという研究報告がある。大豆を使った肉の代替商品のニーズは今後さらに大きくなる」と話す。
菜食主義者やビーガン(完全菜食主義者)が多い欧米では、スーパーに肉代替品の専用コーナーを持つ店が増えている。大豆由来の人工肉を手掛ける米国のスタートアップ、ビヨンド・ミートが5月に上場し、株価が高騰するなど、世界的に植物由来の肉代替品市場が活況を呈している。
日本でもこれまで不二製油(大阪府泉佐野市)が“大豆ミート”を様々な食品メーカーや外食チェーンに向けて供給しており、「10年間で売り上げが倍増」(同社)している。
外食業界では、肉料理がブームになるなど、日本人の「肉食化」が進んでいる。一方で、牛や豚の成育に際して、森林伐採やメタンなどの温暖化ガスの排出といった環境破壊が起きていることが世界的に問題視されるようになってきた。エシカル(倫理的)消費の流れを受けて、生き物を殺傷せずに“肉”を食べたいというニーズも高まっている。大豆由来の“肉”は、こうした問題の解決策として、今後さらに需要が高まるはずだ。
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