三菱電機と兼松コミュニケーションズは6月11日、スマホやタブレットに向けたアプリ「しゃべり描きアプリ」の提供を始めたと発表した。聴覚障害者や外国人との対話、SNS(交流サイト)向けの画像加工などで使うことができる。3カ月間は無料で提供して利用状況を検証し、その後有料アプリとしてリリースする。
マイクボタンをタップしてスマホに話しかけてから指先で画面内に線を描くと、話した言葉が指の軌跡に沿って表示される。指の軌跡に動きを持たせて感情を伝えたり、写真や書類の任意の位置に言葉を配置したりできる。翻訳機能も備える。中国語や英語など10の言語に対応しており、翻訳した言葉を画面に表示し、音声も再生する。


文字を書き込む必要がないため円滑にコミュニケーションできるのが特長だ。もともと三菱電機が2016年に「しゃべり書きUI」として発表した技術を応用した。既存事業に縛られない自主研究プロジェクトの1つとして、「聴覚障害を持ったインターンともっとコミュニケーションを取れるようにしたい」という思いから開発したものだった。三菱電機デザイン研究所の阿部敬人所長は「聴覚障害者とのコミュニケーションに限らず、様々な場面で使える可能性を持った技術だと考えて事業化を探った」と振り返る。
ただ三菱電機が持つFA機器や空調機器、ビルシステムなどの製品が人同士のコミュニケーションを担う場面は少ない。実際の事業にはなかなか結び付かなかった。
「まずアプリとして消費者に提供してニーズを生み出そう」。そう考えて組んだのが、兼松の子会社である兼松コミュニケーションズだった。携帯電話販売事業を手掛ける同社は、2017年に同業である三菱電機子会社のダイヤモンドテレコムと合併。現在は携帯電話販売店を全国に約430店舗展開するほか、企業向けITシステムの提供も手掛ける。「我々にはないスマホアプリのノウハウを持つパートナーとして協力してもらった」(三菱電機の阿部所長)。スマホアプリの開発・販売を兼松コミュニケーションズが受け持ち、売り上げの一部を技術使用料として三菱電機が受け取る。
訪日外国人とのコミュニケーションや、耳が不自由な高齢者に対する医療機関での説明、教育機関での板書時間の短縮――。アプリの用途としても様々な場面を想定しているが、三菱電機の期待はそれにとどまらない。「鉄道、病院、教育、金融など、顧客との対話がある場面なら十分使える。三菱電機の製品にも取り込めるはずだ」と阿部所長は話す。多数の消費者に技術を配って使い方を発見してもらい、自社製品との相乗効果を見つけるという消費者参加型の需要開拓は成功するだろうか。
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