
トヨタ自動車は6月7日、EV(電気自動車)の普及に向けた自社の取り組みの説明会を開いた。HV(ハイブリッド車)では世界に先行するトヨタだが、本格的に量産型のEVを投入するのは2020年の中国市場。すでにEVを市場投入している日産自動車などに比べれば、純粋なEVの取り組みではスピード感には乏しかった。世界各地で強化される燃費規制への対応でEVの販売拡大は不可欠になっている。危機感を募らせたトヨタは、キーデバイスの電池でこれまで手を携えてきたパナソニックだけでなく、車載用電池で世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)などの中国勢とも組む「全方位外交」に舵(かじ)を切った。
「2030年にHVやPHV(プラグインハイブリッド車)、EV、FCV(燃料電池車)を550万台以上販売するという電動化が5年ほど早まりそうだ」。トヨタの寺師茂樹副社長は2017年に公表した電動車両の普及ペースの前倒しに言及した。
背景にあるのが、世界各地で強まる燃費規制だ。欧州では30年までに乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量を企業平均で21年目標から37.5%の削減を求めることを決めた。
日本でも3日、国土交通省と経済産業省が30年度の燃費基準案を公表。16年度の企業別平均実績に比べ32.4%の改善を求めるものだ。中国では19年から一定比率をPHVやEVなど「新エネルギー車(NEV)」にすることを求める規制が始まった。
こうした燃費規制強化の流れのなか、トヨタは「現実解はHVの拡大」との姿勢を貫いてきた。4月に発表したHV関連の特許開放もそうした考えに基づくものだ。しかし、「世界で電動車両に対する期待が高まっている」(寺師副社長)ため、1年半前に発表した電動車両の販売目標を5年前倒しせざるを得なくなった。
電動車両のカギを握るのが電池。これまで、トヨタはHVなどの電池をパナソニックと共同出資するグループ会社から調達してきた。パナソニックとは20年末までに新会社も設立する計画だ。しかし、それだけでは調達量に限りがあり、電動車両の拡大に対応しきれない。そこでCATLやBYD、GSユアサ、東芝とも手を組み、電動車の普及に対応することを決めた。「仲間づくりが下手くそ」(寺師副社長)と自ら称するトヨタだが、電動化の加速には全方位外交をせざるを得なかったというわけだ。
独フォルクスワーゲン(VW)はディーゼル車やFCVの開発を縮小・延期する一方でEVシフトを鮮明にしている。「VW(のEVシフト)で焦ったということはない」(寺師副社長)と言うが、1年半前に描いたロードマップの見直しを迫られた状況に焦りがないわけではないだろう。
6日にはSUBARU(スバル)とEVの開発で協業することを発表している。20年以降に全世界で10車種以上のEVを投入するとしているトヨタ。HVで培った電動車両のノウハウの真価が問われるのはこれからだ。
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