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 「規制緩和どころの話ではない。このままでは事業継続が危うくなる」

 新興企業が軒並みおびえている資料がある。金融審議会が5月29日に開催した「金融制度スタディ・グループ」で議論された「『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告(案)」。ここに致命的な文言を発見したからだ。

 業界に激震が走ったのはこの文言だ。

「債権者が一般消費者である場合については、一般消費者が『収納代行』業者の信用リスクを負担することとなる。そのため、こうした『収納代行』については、利用者保護等の観点から、資金移動業として規制の対象とすることが適当であると考えられる」

 なぜこの文言に対して新興企業が敏感に反応しているのか。背景にあるのは2010年4月1日に施行された「資金決済法」にある。もともと資金決済法は銀行の独占業務である為替取引を一般企業にも開放する規制緩和の流れで成立した法律だ。

 しかし、消費者保護の観点から資金決済法が定める資金移動業は登録制となっており、送金途中の滞留資金の100%保全が求められるほか、マネーロンダリング対策の観点から本人確認義務の徹底が求められる。

 敏感に反応しているのは消費者間取引(CtoC)ビジネスを展開している新興企業だ。最も影響を受けるのは、政府が打ち出している「未来投資戦略2018」で重点施策として位置づけられているシェアリングエコノミー業界だ。

 こうした業界は消費者間で取引することが前提となっているが、料金の支払いの過程に事業者が入るのが一般的だ。消費者同士の取引はトラブルが多発するため、消費者保護の観点から双方が安心して取引できる状況になるまで、一時的に事業者が資金をプールしている。こうした事業については法律上は収納代行と位置づけられ、資金決済法の枠外とされてきた。

 収納代行が資金決済法が定める資金移動業の規制対象に加わることになれば、一時的にプールしている資金と同額の供託金を準備しなければならないほか、本人確認の徹底が求められることになり、極めて“重い”ビジネスへと変貌する。消費者間取引のビジネス領域では新興企業が生まれにくくなる。

 なぜ、このタイミングで突如、金融審議会は収納代行を資金決済法が定める資金移動業の規制対象に加えようとしているのか。

 背景にあるのは、一部のフィンテック企業が収納代行が資金決済法の適用除外となっていることを逆手に取り、資金移動業として金融庁への登録をせずに実質上の送金ビジネスを手がけていたためだ。本来であれば、こうした一部の「脱法」事業者にのみ網をかけた法制度を整えればよいはず。だが、金融審議会の取りまとめた報告案の文言を拡大解釈することで、今後国の重点施策として掲げているシェアリングエコノミー業界にまで影響を及ぼす可能性を残してしまった。

 金融制度スタディ・グループでの報告書案はそのまま改正法案となるわけではない。だが、このまま報告書案がまとまれば、来年目指しているの改正資金決済法の方向性として定まり、文言が一人歩きし始める可能性がある。金融庁がシェアリングエコノミー業界に対して同案がそのまま規制につながるわけではないといくら説明しても、今後の展開次第で事業継続の危機に陥る可能性は払拭できない。

 週明けの6月10日、金融制度スタディ・グループは最終回を迎え、報告(案)から報告へと決着がつくことになる。新興企業の不安が払拭できなければ、政府が打ち出している重点施策にも影響を及ぶすだけに、最終的に「政治による決着」が求められることになる。

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