マネーフォワードは2019年秋をめどに企業を対象とした資金管理サービス「Business Financial Management(BFM)」の提供を始める。金融機関に卸し、金融機関が独自ブランドで企業への提供を始める。既に導入を決めているのは愛知県を地場にする岡崎信用金庫。同金庫の法人顧客向けに提供するという。

 マネーフォワードは個人を対象とした家計簿サービス「マネーフォワードME」を提供している。2650の銀行やクレジットカード、ポイントサービスなどと連携し、お金の出入りを可視化できるサービスだが、今回のBFMは企業を対象とした“家計簿”サービスの位置づけだ。複数の金融機関を利用している企業が預金情報を一元的に管理できる。

 既に資金効率の向上や内部統制の強化を目的としたキャッシュマネジメントツールは存在している。だが、主に大手企業を対象としているサービスがほとんど。「小規模な企業ではExcelなどで管理しているケースが多い」(マネーフォワードMoney Foward X本部の本川大輔副本部長)という。

 企業にとってBFMのようなツールは非効率な資産管理の改善を期待できる。一方、提供する金融機関には新たな可能性も生まれる。資産を一元管理するため他の金融機関での取引状況も把握可能になり、企業の経営状況の全体像が見えやすくなるためだ。「キャッシュフローが見えれば、会計データがなくても少額であれば融資可能になるのでは」(マネーフォワードの本川副本部長)という期待が生まれることになる。

 だが、この未来には大きな問題が横たわる。

 BFMのような資産集約ツールを活用するためにはインターネットバンキングの契約が前提。だが、この法人向けインターネットバンキングの普及が進んでいないのだ。

 ある地方金融機関の担当者はこう明かす。「取引がある法人顧客の中で、インターネットバンキングの利用率は2割程度」

 個人向けとは異なり、法人向けインターネットバンキングは月額1000~2000円程度の費用がかかる。1つの金融機関だけに限っての取引であれば費用負担もまだ軽く済むが、複数の金融機関と取引している場合は毎月の費用がばかにならない。そのため、法人インターネットバンキングの契約がなかなか進まず、データ化されない世界がそのまま残ってしまっているという現実がある。

 「事業規模が小さくなればなるほど節税対策をしている企業が多く、会計が筒抜けになるのを嫌うのでは」と指摘するのはPwCコンサルティングの矢吹大介パートナーだ。金融機関が企業のデータを入手するためには、金銭面、心理面の双方で乗り越えなければならない壁がある。

 逆に言えば費用対効果に見合う利便性を実感できれば、企業は動き始める。資金管理の効率化による恩恵をどこまで訴求できるかに、その成否がかかっていると言える。

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