ダイハツ工業は6日、独自の設計思想「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」に基づく新技術を公表した。軽自動車から新興国向け小型車まで一括した開発を目指し、エンジンやサスペンションなどを含めたプラットフォームを刷新する。サイズが違う複数のモデルを「相似形」で開発することで製造コストを10%程度削減するほか、市場投入のペースを約1.5倍に速める計画だ。発表会で松林淳取締役は「小は大を兼ねる」と強調。軽自動車で鍛え上げた「良品廉価」のノウハウを強みに新興国市場でさらなる拡大を狙う。

16年にトヨタ自動車の完全子会社となったダイハツは、トヨタの苦手とする安価な小型車の開発を任されている。たとえば、兄弟車として有名なダイハツ「ブーン」とトヨタ「パッソ」。初代と2代目は共同開発だったが、16年4月に発表した3代目からは企画から設計までをダイハツが請け負った。17年に2社の間で発足した「新興国小型車カンパニー」では事業企画は共同で行うが、製品企画はダイハツが主導。「小型車はダイハツに任せると言ってもらった」(松林取締役)という。
こうした背景から、小型車の開発効率を高めるために作られたのがDNGAだ。先行してトヨタが始めた「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の対になる設計思想だが、開発手法は大きく異なる。TNGAはCセグメントの「プリウス」を皮切りに、上下セグメントで開発を横展開する。一方、DNGAでは軽自動車のプラットフォームをベースに新興国向けのA/Bセグメントの開発に広げていく。空間やコストの条件が最も厳しい軽自動車で磨いたノウハウをそのまま上のセグメントでも発揮する狙いだ。「大きい車からサイズとコストを共に下げていくのは難しいが、小さい車からなら安くて良いものを大きく作ることができる」(開発担当者)と、徹底して「小から大のクルマづくり」を進める。
DNGAの第1弾となるのが今年7月に発売する新型軽自動車「タント」。年内に第2弾の投入も予定している。25年までに21車種に展開し、同年に約250万台のダイハツ開発車を生産する計画だ。自社工場の生産能力だけではこの目標の実現は難しい。「すべてをダイハツの工場で生産するのではなく、他社の工場で生産してもらうことも想定する」(同社広報)。計画する250万台のうち、「トヨタブランドとダイハツブランドの割合は半々」(松林取締役)とし、トヨタのチャネルを活用し海外での販売も伸ばしたい考えだ。目標通りにいけば、ダイハツをベースとするトヨタブランドの小型車は、18年の67万台から倍近くの125万台に伸びることになる。先進国の市場が伸び悩む中、トヨタグループの中で新興国開拓を担うダイハツの役割が重要になりそうだ。
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