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(写真:AFP/アフロ)

 欧州自動車大手FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)は6日、仏自動車大手ルノーに提出していた経営統合案を取り下げたと発表した。5日に開かれたルノーの取締役会で筆頭株主の仏政府から賛同が得られなかったことを受け、一旦、白紙に戻した。ルノーと連合を組む日産自動車と三菱自動車を含め生産台数で世界最大の「1500万台連合」をつくる野望だったが、国境をまたぐ自動車業界再編の難しさが改めて浮き彫りになった。

 「今は欧州の中での話に全力を注いでいる。とにかくフランス政府を納得させること。日産のことはその次の話だ」。交渉関係者が直前に語っていたそんな心配があっさりと現実のものになった。仏政府がFCAに示していた「不服」は解消されず、1年近い助走期間を経てようやく動き出した大型M&A(合併・買収)は5月27日に表面化してからわずか10日で幕を閉じた。

 FCAの発表に先立ち、ルノーは「仏政府から決議を延期したいとの要望があり、取締役会で結論を出すことができなかった」と5日の取締役会を総括した。仏報道によると、仏政府がFCA側に求めていたのは、新会社に仏政府の役員ポストを用意すること、長期的にルノー出身者が要職に就ける確約をすることなど。FCA側は「仏政府は雇用対策と技術にこだわっている」(関係者)との理解から実質的な本社機能をフランスに置くなどの譲歩案を再提示したようだ。

 だが、仏政府はやすやすと首を縦に振らなかった。ルメール経済・財務相は5日、「日産自動車の賛同を得られなければいけない。日産も統合案(の議論)に関わり、情報提供を受けることが必要だ」と述べていた。仏政府にとって自動車産業は「虎の子」で、支持率低迷からの脱却を目指すマクロン大統領が注力する経済政策の中心。ある事情に詳しい関係者は「27日の提案になったのはマクロン氏の政権運営を意識して欧州議会選挙を待ったから」と指摘するが、相手にペースを握られて進む交渉が気に食わなかったのかもしれない。

 日産の西川広人社長は3日に出したコメントの中で、FCAとルノーの統合案に関して「領域、間口が広がり、シナジーを拡大するオポチュニティーがある」と一般論を示しながらも「実現した場合、これまでの日産とルノー両社における関係のあり方を基本的に見直していく必要がある」とけん制していた。ルノーが「結婚相手」として注目されるのは、日産や三菱自動車の持つEV(電気自動車)などの先端技術がバックにあるから。欧州勢の綱引きに翻弄される中で、その存在感を示した格好ではある。

    
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