JR東日本と楽天は5日、キャッシュレス事業で提携すると発表した。2020年春から、利用者は楽天の決済サービス「楽天ペイ」を使って電子マネー「Suica(スイカ)」へ入金できるようになる。

 5日、都内で開いた会見でJR東日本の野口忍常務執行役員は「楽天はネットの世界で圧倒的な顧客をもつ。ベストパートナーだ」と述べた。一方、楽天の中村晃一常務執行役員は「楽天とスイカで社会のインフラとなるような決済サービスを作っていきたい」と意気込んだ。

 キャッシュレス決済の市場にはスタートアップからIT大手まで様々な企業が参入している。ソフトバンクとヤフーが出資するPayPay(ペイペイ)やLINEペイ、スタートアップのオリガミペイなど多種多様で、各社は「2割還元」、「1000円ボーナス」といったキャンペーンを相次ぎ打ち出し、顧客獲得を急いでいる。

 競争が激しくなるなかで、企業間のゆるやかな提携関係も生まれつつある。楽天ペイはKDDIが提供する「auペイ」と販路拡大に向け手を組み、LINEペイはメルカリの「メルペイ」と提携する。

 そんななか、提携の行方に注目が集まっていたのがスイカだ。

 スイカは都内を中心に利用できる場所は広がっているうえ、利用者にとって身近な移動の場で毎日使われる。ペイペイをはじめとした事業者が提供するQRコード決済よりもスイカのほうがはるかに使い勝手がよく、キャッシュレスに参入する企業にとってスイカとの提携は垂涎の的だった。

 そのJR東日本が選んだのは楽天だった。両社は13年から電子マネーの加盟店の開拓で協力しており、関係は深い。「長年の信頼関係がもたらした結果」と中村氏は話す。

 ただ、両社がどこまで今回の提携の枠を広げていくかは未知数だ。両社は決済での提携をテコに、JR東日本がもつ施設と楽天のネットサービスの融合なども目指すという。一方で、JR東日本の野口氏は「今回の提携とは別に、スイカをもっとライトに外部企業に提供できるAPI(他社サービスと連携する仕組み)基盤を開発中」と話す。

 オープン戦略に舵(かじ)を切りつつあるJR東日本が、提携の輪をさらに広げていく可能性は高い。巨人であるJR東日本が動き出したことで、乱戦模様だったキャッシュレス決済市場の戦いは新たな局面に入った。

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