
「まさかルノアールが紙巻きたばこを禁止にするとは…」。
コーヒーチェーン業界に衝撃が走った。「喫茶室ルノアール」などを運営する銀座ルノアール(東京・中野)は30日、2020年4月からグループ全店舗で、紙巻きたばこの喫煙を禁止すると発表した。同社のリリースによると同年4月から全面施行される改正健康増進法への対応と、従業員の健康への配慮が目的という。
ルノアールといえば、禁煙化が進む都心における愛煙家の数少ない「オアシス」だった。それにも関わらず、大手コーヒーチェーンに先んじて紙巻きたばこの禁止を明らかにしたことは、ネットでも大きな話題となり、TwitterなどのSNSでは「今まで喫煙喫茶が売りなのかと思っていた」「喫煙者の楽園が」と動揺が広がった。
コーヒーチェーン業界関係者も「ルノアールが禁煙とはよほどのこと。『灰皿とお茶が出てくる』ことこそがあの店らしさと思っていた。喫煙しながら読書をする男性客などとも相性がいいはずだが…これも時代の流れなのかもしれない」と驚きを隠せない。
大手コーヒーチェーンの中でも紙巻きたばこをめぐっては対応が大きく分かれる。厚生労働省の「平成29年 国民健康・栄養調査」では男性の喫煙率は初めて3割を切ったことが話題となったが、コーヒーチェーンにおける愛煙家のニーズは依然として根強い。ドトール・日レスホールディングスは「ドトールコーヒーショップ」の受動喫煙対策として、(1)完全禁煙、(2)紙巻きと加熱式たばこの喫煙スペースを分ける、(3)加熱式たばこのみ吸える店舗の3種に分けることを明らかにしており、紙巻きたばこを完全には排除しない方針だ。
一方、ルノアールと同様に愛煙家の支持が根強いサンマルクカフェ(3月末で全国404店)を運営するサンマルクホールディングスの担当者は「正式な決定ではない」と前置きしながらも、「紙巻きたばこを吸える場所は設けない方針」と話す。改正健康増進法が施行されると、飲食のためのスペースと紙巻きたばこを喫煙するためのスペースは完全に分けなければならなくなる。「紙巻きたばこのための対応をすると、座席数も減らさないといけなくなる」というのがその理由だ。
あるコーヒーチェーン業界関係者は「喫煙率は年々下がっているし、(ルノアールのように)紙巻きたばこを全面的に禁止する流れは広がると思う」との声を漏らした。来年以降、愛煙家にはさらに厳しい状況が続きそうだ。
以下の記事も併せてお読みください
-
2019年1月16日
1分解説
決算で見えた、串カツ田中「全席禁煙」戦略の成否
-
2019年3月22日
1分解説
狭まる禁煙包囲網、すかいらーくも「敷地内全面」で
-
2019年1月23日
時事深層
外食決算「明暗」分けたのは禁煙対策
-
2019年2月7日
世界鳥瞰
電子たばこが促す新論争:喫煙者の健康か、若者の健康か
-
2019年4月19日
1分解説
「喫煙者は採用しない」会社も 狭まるたばこ包囲網
-
2018年5月23日
時事深層
緩い「たばこ規制」超えて動く外食
禁煙を逆風からチャンスに変える
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?