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銀行が紙通帳からの脱却を図るのには、大きな理由がある。写真はイメージ(写真:PIXTA)

 長らく、手元の銀行通帳に入出金記録を記帳していない人も多いのではないだろうか。大手銀行が原則、紙の通帳を廃止し、デジタル通帳への切り替えを促すことを決めた。

 三菱UFJ銀行は6月10日から、新たに口座を開設する顧客に対して、パソコンやスマートフォンで閲覧する「デジタル通帳」を発行する。インターネットバンキングの利用を促し、紙の通帳にかかるコストを削減する狙いだ。一方、希望者には従来通り、紙の通帳を無料で発行する。デジタル通帳を巡っては、三井住友銀行が同様の取り組みを始めていたのに追随した。

 ネットバンキングの取引が増える中、銀行各社はこれまでも原則、ネットを経由した口座開設の場合、デジタル通帳を発行している。こうした中、三菱UFJ銀は今年2月、デジタル通帳で入出金記録をさかのぼることができる期間を過去10年に延長するなど、利便性をさらに向上していた。今回、店舗でも紙ではなくデジタル通帳の提供を基本としたうえで、顧客が希望した場合にだけ紙の通帳を発行する。こうした取り組みでデジタル化の加速につなげたい考えだ。

 デジタル化以外にもう一つ、紙通帳からの脱却を進めることには大きな理由がある。デジタル通帳への切り替えが進めば、これまで銀行側が負担していた経費を軽減できるからだ。紙の通帳は印紙税法で「課税文書」と位置づけられており、1口座あたり毎年200円の税がかかる。それに対して、デジタル通帳は同税がかからない。三菱UFJ銀には約4000万の口座があり、単純に計算すれば、80億円近くの税金を国に払っている。顧客に負担は求めていない。紙からデジタル通帳への乗り換えが進めば、今後支払う税負担は減ることになる。

 国税庁によると、「銀行業界全体としては毎年約700億円前後を納めている」(広報)という。過去5年分の推移を調べてみると、2013年は740億円▽14年732億円▽15年726億円▽16年710億円▽17年690億円──と微減傾向だった。納付額の推移をみても、ネット利用者の増加を背景に銀行業界で目下、紙からデジタルの通帳への移行が進んでいるとも推察できる。三菱UFJ銀の広報関係者は「ネットでの銀行取引が増え、紙の通帳を頻繁に使っている人が減っているのは確かだ。そうはいっても高齢者を中心に記帳ニーズはあるので、紙の通帳を完全になくすことはできない。デジタル通帳への移行の流れがある中で実需・実態に即した対応を行うというのが今回の動きだ」と語る。

 実は、紙の通帳に印紙税がかかるのは銀行だけ。信用金庫、信用組合、農業協同組合などの比較的小規模の金融機関にはかからない。税負担がないのは、営業エリアが限られる信金などの経営環境を配慮したためとも考えられるが、今回の動きは、大手行でも印紙税が大きな負担となっていることを浮き彫りにした。それだけ、低金利環境下で改めて銀行の経営が苦しいという一面を映し出しているとも言え、他行でもこうした動きが加速しそうだ。

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