小田急線代々木上原駅から徒歩で10分ほどの住宅街。ここに1984年に完成した地上3階建ての高級賃貸マンションがある。
野村不動産がこのマンション1棟を丸ごとリノベーションして分譲する計画を進めている。同マンションを買い取って、柱などの躯体(くたい)部分を改修。配管や空調、ガス、電気といった設備もすべて入れ替えて、新築同様に刷新する。
総戸数8戸だった建物を12戸に分割するとともに、増築棟も建設し、計15戸を販売する。完成は2020年2月末の予定だ。

リノベーションにあたっては、竹中工務店の技術研究所がコンクリートや鉄筋などを調査・分析して、改修後65年以上の耐用年数を確保。一般社団法人の建築研究振興協会など第3者機関からも耐用年数についてのお墨付きを得たほか、野村不動産も引き渡し後10年間のアフターサービスなど新築同等の保証を用意した。
こうした対応もあり、販売価格は新築並みに設定した。1戸当たりの専有面積は146.57~232.46平方メートルで、2億~5億円台で売り出す。
野村不動産が1棟丸ごとリノベーションに乗り出すのにはいくつかの理由がある。
まず施工コスト。今回の代々木上原のケースのように、敷地が住宅地の中にある場合、道路幅員が狭く施工コストがかさみやすい。建材価格や人件費が上昇する中、解体費用がかからないリノベーションは新築に比べて低コストで建設することが可能になる。
さらに新築物件の用地確保の問題もある。同じくマンションのリノベーションを手掛ける三菱地所の関係者は「好立地に量産できる時代ではない」と語る。東京都心を中心にマンション用地の確保が困難になる中、各社は多少、制約のある用地であっても開発を余儀なくされる。開発手法の多様化は必至だ。
リノベーションした物件は新築マンションの価格の8割程度というのがこれまでの相場のイメージ。新築並みという野村不動産の強気な価格戦略の行方を不動産各社が見守っている。
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