NHKのテレビ番組をインターネットに24時間同時配信することを認める改正放送法が5月29日、成立した。テレビ放送と同じタイミングで、スマートフォンなどでもNHKの番組を見られるようになる。利便性は高まりそうだが、スマホでネット配信番組を見る場合の受信料はどうなるのか。

東京都渋谷区のNHK放送センター(写真:共同通信)
東京都渋谷区のNHK放送センター(写真:共同通信)

 NHKは「常時同時配信を放送の補完と位置づけており、受信契約を結んでいる世帯は、追加の負担なく利用できるサービスにする考え」としている。つまり、家にテレビがあり、受信料を払っていれば、追加料金なしでスマホやパソコンでNHK番組を見ることは可能ということだ。

 では、スマホでNHKの配信番組を見る人が、世帯として受信料を払っているかどうかをどのように確認するのか。NHKは「詳細は検討中だが、利用を希望する方には最初に登録をしていただき、その情報をもとに、NHK側で受信契約があるか照合することにしている」という。

 だが、「家にテレビがない」という理由で受信契約をしていない人が、スマホやパソコンを持っていることもあるだろう。その場合はどうなるのか。気になる判決がある。

 「自宅にテレビがなく、ワンセグ機能付き携帯電話だけを持っている場合、NHKと受信契約を結ぶ義務があるか」が争われた訴訟だ。今年3月、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は原告側の上告を退け、「契約義務がある」としたNHK勝訴の東京高裁判決が確定した。

 この判決に照らすと、テレビはなくスマホのみ持っている場合でも、自動的に受信契約を結ばなければならないように感じられる。

 NHKに問い合わせると、まず「ネット配信は放送ではない」と指摘。放送法64条1項は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」としている。ワンセグ機能が搭載されていないスマホやタブレット、パソコンは「放送」を受信することができない。テレビがなく、ワンセグ機能が搭載されていないスマホなどのみを持っている「テレビなし・スマホあり」のケースは「受信契約の対象にはならない」(NHK)という。

 NHKは、ネット配信番組を見る際、「契約が確認できなかった場合には、同時配信の画面上に、例えば、『このサービスが受信契約者向けのサービスであること』などのメッセージを表示させた状態とする方向で検討している」としている。メッセージの大きさはわからないが、「テレビなし・スマホあり」の場合、受信契約は要らないものの、ネット配信されるNHKの番組も完全な形では視聴できない、ということになりそうだ。

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