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 「米国政府は民間企業を攻撃するために非常に多くの時間、リソース、および政治資金を使用している。これは危険な先例となるだろう」

 「米国政府は華為技術(ファーウェイ)がセキュリティーの脅威であることを示す証拠を示していない。 銃も硝煙もない。あるのは臆測だけだ」

 「今日は通信とファーウェイ。明日はあなたの業界、あなたの会社、あなたの消費者が対象になりうる」

 中国の華為技術(ファーウェイ)の最高法務責任者である宋柳平・上級副社長は5月29日、深セン市で開催された会見で、米国を非難した。ファーウェイは同日、同社が3月に米国政府を相手取って提起した2019年度国防権限法889条の合憲性を問う訴訟について、略式判決を申し立てた。

本社がある中国・深セン市で会見したファーウェイの宋柳平・最高法務責任者(左から2人目)

 国防権限法の成立後、米国はさらにファーウェイへの制裁を拡大した。5月15日にトランプ大統領が米国企業によるファーウェイ製品の調達を事実上禁じる大統領令に署名し、16日には米商務省もファーウェイに対する事実上の輸出禁止措置を発効させた。

 すでに影響は現れており、米グーグルや半導体設計大手の英アーム・ホールディングスなどが米国の制裁に従ってファーウェイとの取引を打ち切ると報じられている。同社の調達先企業は納入製品が制裁対象かどうかの洗い出しに追われており、ファーウェイは審理を省略する制度を利用して、早期に判決を得ることで取引先の動揺を抑えたい考えだ。宋上級副社長は「市場において公平な競争をするチャンスを得ることが我々にとっての勝利だ」と話す。

 中国政府もファーウェイを保護する姿勢を見せている。日本経済新聞によると中国政府は28日、世界貿易機関(WTO)の会合で米国が例外規定を乱用していると訴えた。WTOは加盟国の一方的な貿易制限を禁じているが、安全保障は例外としている。中国は28日の市場アクセス委員会で、安全保障の脅威になっているかは客観的な根拠に基づくべきだと主張した。

 トランプ米大統領は23日、ファーウェイへの制裁問題について「貿易協定の一部に含むことは可能だ」と述べている。米国がファーウェイ製品にセキュリティーリスクを感じているのは事実だろうが、同時に米中貿易交渉において有利な条件を引き出すための取引材料として利用しているのは明らかだ。

 会見では英国メディアの記者が中国共産党とファーウェイの関係性について食い下がる場面が見られた。一党独裁の中国に本拠地を置く企業であるという事実が、米国や西側諸国における不信感の根底にあることは間違いない。米国がファーウェイへの圧力を強めて中国政府とファーウェイの距離が近づけば近づくほど、対中強硬派にとっては追い風になるという構図にある。

 米中貿易交渉の山場は6月末に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせて開かれる米中首脳会談になりそうだ。両国のさや当ては、当分の間続くことになるだろう。

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