
日野自動車といすゞ自動車は5月27日、2両の車体がつながった「連節バス」の販売を始めた。日本企業による連節バスの開発は初めて。一般的な路線バスの1.5倍となる120人の乗客が輸送可能となる。まずは2020年の東京オリンピック・パラリンピックの大量輸送需要を見据えるが、新たな交通インフラとして注目されるBRT(バス高速輸送システム)や鉄道路線の維持が難しくなった地方への展開も視野に入れる。
日野といすゞは2004年にバス事業を統合し、路線バスと観光バスを共同開発してきた。今回の連節バスはもともといすゞの工場だった宇都宮事業所で製造する。主にハイブリッド機構や制御などシステム部分を日野、車体やエンジンなどをいすゞが担当した。連節バスの運転には特別な訓練や免許は不要。車両の後方にカメラとモニターを設置し、「従来のミラーで行っていた確認と変わらない」(日野自動車山口誠一チーフエンジニア)。乗降口の扉を通常の路線バスから最大20センチ広げ、大量乗降に適したデザインとした。
18年のバスの国内販売台数は全体で1万3702台。トラックなど貨物車の同年販売台数43万8787台の3%にすぎず市場規模はかなり小さい。現状、国内で連節バスを導入しているバス会社などは11事業者と限られるなか、両社が開発に踏み切ったのはなぜか。
現在、国内を走る連節バスは、独メルセデス・ベンツなどの海外製品を輸入したもの。日本の道路事情に合わせて改造するため時間がかかるほか、整備や部品交換などで不便も多く「日本製の連節バスを作ってほしいという要望があった」(いすゞ自動車の鈴木隆史チーフエンジニア)という。そこに東京都が臨海部で連節バスの導入を計画したことが重なり、開発の契機となった。

東京臨海部では豊洲・晴海エリアを中心に再開発が進む。選手村のマンション群には五輪後に1万人超の住人が流入する見込みだ。人口急増にともなう交通課題にそなえ、都はBRTを整備。2020年春からは連節バスの運行を始めるとする。
地方でも需要が期待できる。新潟市は15年に中心部の新たな交通網として「にいがた新バスシステム」を整備し、同時に連節バスを導入した。「鉄道を維持するコストに比べると、BRTの整備に必要なコストははるかに小さい」(交通事業関係者)こともあり、現役路線であるJR西日本の宇部線でも、市をあげて鉄道からBRTへの転換を検討している。こうした地方路線代替の動きにも「(BRTとして)有効性はある」(鈴木チーフエンジニア)と前向きに話した。
14年には国土交通省が連節バス導入のガイドラインを作成するなど、国も導入に前向きだ。今年度以降、北九州市や横浜市などでも連節バスが導入される予定。蛇腹のバスが見慣れた光景となる日は遠くない。
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