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 野村証券を傘下に持つ野村ホールディングス(HD)は24日、東京証券取引所の市場再編に関する有識者懇談会での議論内容を野村社員が投資家に漏らし、情報管理体制に問題があったとして、社内処分をしたと発表した。金融庁は近く業務改善命令を出す方針。業務改善命令が出れば、野村への命令は12年に上場企業の公募増資を巡るインサイダー問題以来となる。野村HDの内部管理体制不備が改めて露呈した形だ。

会見で「忸怩(じくじ)たる思い」と語った野村ホールディングスの永井浩二CEO

 「法人関係情報の取り扱いは厳しくしていたが、それに該当しない市場に影響を及ぼす重要情報については、必ずしも明確な規定がなく、個人の良識、行動規範に依存していた。極めてゆゆしき問題だ」。同日午後、都内で記者会見した野村HDの永井浩二・最高経営責任者(CEO)はこう陳謝した。前回インサイダー問題では当時のCEOが責任を取って辞任し、永井氏がトップに就任。改革の「旗手」として情報管理徹底を進めていただけに、今回の不祥事に落胆の色を隠せなかった。経営責任があるとして役職員7人は減給処分とし、永井CEOは月例報酬の3割(3カ月)を返上する。

 情報漏洩は3月に発覚。東証が第1部など現在4つある市場区分を見直すため、有識者懇談会で新市場の時価総額など上場基準を議論していた。会のメンバーだった大崎貞和・野村総合研究所フェローが、非公開となっていた内容を野村証券のストラテジストに伝え、社員が機関投資家にその内容を漏らした。

 もともと、この問題に関しては「あれはやばい。社内の情報共有だけでなく、外部の投資家に漏れている点でアウトだ」(金融関係者)との声もあり、処分は避けられない状況だった。野村HD側が早い段階から「この事態は重くとらえている」との認識を示してきたことも事態の大きさを裏付けていた。

 情報漏洩が起きた東証の市場再編の問題は、関係者の関心が高かった。昨年来、市場関係者の間で新しい東証1部の最低上場基準の一つとなる時価総額がどこに線引きされるのか、様々な臆測を呼んだ。例えば、経営悪化が危ぶまれている上場地方銀行。新1部の時価総額基準が「500億円以上」に設定されると、30行程度が“落選”する。「市場区分の見直し議論は、地銀再編を促したい金融庁の意向があったのでは」などの噂も飛び交ったほどだ。

 そうした中で情報漏洩が起きた。情報流出そのものが許されないのはもちろんだが、改善に取り組んでいたはずの野村の企業風土が全く変わっていなかったことが明らかになっただけに衝撃は大きい。永井氏は「インサイダー問題後、社員の職業倫理教育などを徹底していた。しかし、組織がこんなことをしたら、市場にどう影響を与えるかという認識に至っていなかった。忸怩(じくじ)たる思いがある」と弁明。情報管理の面で、インサイダー問題以降も組織の根っこは変わっていないことが浮き彫りになった。

 野村は19年3月期に1000億円を超える最終赤字を計上し、首都圏を中心に全体の2割の店舗を統廃合するリストラ策を進めると公表したばかり。凋落(ちょうらく)が著しい証券業界のガリバーは経営を立て直すことができるのだろうか。

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