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 「規制の対象がエマージングテクノロジーというが、何を指すのか。それが不明確なだけに、警戒している」

 日本の経済官庁の関係者がこう語る米国の法律がある。FIRRMA(Foreign Investment Risk Review Modernization Act、ファーマ)だ。日本語だと外国投資リスク審査近代化法となる。

 中国の華為技術(ファーウェイ)を対象にした米国政府の禁輸措置が世界に様々な影響を及ぼしている。この禁輸措置の根拠となっているのが輸出管理改革法(ECRA)で、戦略上重要なテクノロジーの輸出を規制する法律だ。ファーマは昨年夏、ECRAと同時に成立している。

 ファーマは米国企業などへの外国企業による重要なテクノロジーや産業基盤などへの様々な投資を規制するものだ。シンガポールに本拠を置くブロードコムが、米クアルコムを買収しようとした際に発動され、クアルコム買収は阻止された。

 ファーマの成立により、外国企業による米国への投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限は強まった。例えば、米国企業に少額に出資し、その後段階的に支配していくようなケースを排除できる。これまでは問題なかったマイナーな出資などにも網をかけようとするものだ。

 一見、日本企業には大きな影響がないように思えるが、欧米の法制度に詳しい、みずほ総合研究所欧米調査部の小野亮主席エコノミストは「ファーマやECRAのターゲットは中国だが、日本企業も影響を考慮する必要がある」と指摘する。

 どういうことか。まず影響が出る可能性があるのは、米国企業や海外企業の米国事業の買収だろう。「米国の重要産業を買収するケースは言うまでもないが、資本やヒト、技術面で中国の企業や大学などと関係を深めている日本企業が買収するケースでは、対米投資審査をパスするのは相当難しくなるだろう。案件成立まで相当の時間がかかることも念頭に置かなければならない」(小野氏)

 米国事業のリストラの際も注意が必要だ。「売却先から中国企業を排除しない限り、売却計画がとん挫する可能性が高まっている」(同)