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ソニーが金融事業の完全子会社化を発表した。フィンテックなど新領域への事業展開を加速させる。コロナショックで課題になりそうなのがエレクトロニクス事業。家電各社は軒並み厳しい状況だ。一足先にコロナ禍からの回復を見込む中国の企業が勢いを取り戻せば、再び消耗戦に陥りかねない。

 「企業価値や業績は高まる。戦略としてはポジティブな評価」。シティグループ証券の江沢厚太アナリストは、ソニーが5月19日の経営方針説明会で打ち出した戦略をこう評価する。

ソニーは金融をエレクトロニクスやエンターテインメントと並ぶコア事業と位置付ける(写真:AFP/アフロ)

 ソニーが発表したのは、金融事業を手がける上場子会社ソニーフィナンシャルホールディングスの完全子会社化。現状、ソニーフィナンシャルに約65%出資しているが、約4000億円でTOB(株式公開買い付け)を実施して残りの約35%を追加取得する。TOBが成立すればソニーフィナンシャルは上場廃止となる。

金融は「コア事業」と再定義

 吉田憲一郎社長兼CEO(最高経営責任者)は「金融はエレクトロニクスやエンターテインメントと並ぶコア事業だ」と、オンラインでの記者会見で強調した。完全子会社化によって「迅速かつ柔軟な経営判断をしていく」と話した。

 ソニーは18年4月の吉田社長就任以降、エレクトロニクス事業で培った技術を映画などエンタメ事業や金融事業に横展開していく戦略を進めてきた。18年7月には東京・大崎にあったソフトウエアを中心とするシステム開発部門と神奈川県・厚木にあった材料とデバイスの開発部門を一体化した「R&Dセンター」を発足させるなど、実用化を意識した研究開発部門に再編している。金融事業を完全子会社化することで、金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」領域での開発を加速するもようだ。

 今回の完全子会社化では、経営基盤の安定化や企業価値を高める狙いもある。吉田社長は「地政学リスクが高まる中、金融事業は国内が中心。安定的な収益を今後も期待できる」と語る。企業価値向上について、十時裕樹CFO(最高財務責任者)は「業績面では少数株主に流出していた利益を取り込めるようになる」と説明。年間400億~500億円の純利益を押し上げる試算を示した。

 経営方針説明会では21年4月1日付で社名を「ソニーグループ」に変更することも発表。ソニーはこれまで米ヘッジファンドのサード・ポイントからエンタメ事業や半導体事業の分離を要望されても、「多様性こそが強み」(吉田社長)として拒否し続けてきた。金融事業も完全子会社化し、まさに「グループ」の強みで新型コロナウィルスの感染拡大の影響を抑える考えだ。

 5月13日に発表済みの2020年3月期の連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前の期比5%減の8454億円。コロナの営業利益への影響額が682億円のマイナスだったが、過去2番目の高水準で着地した。稼ぐ力は電機大手の中でも突出してきたと言える。