全1991文字
「二子玉川 蔦屋家電」でアバターロボットを介した遠隔接客が行われた(東京・世田谷)

 ANAホールディングス(HD)が、個人によって遠隔操作できる「アバター(分身)ロボット」の新事業を進めている。自分で動かし、カメラとマイクを通じて周囲を見たり会話したりできるロボットだ。新型コロナウイルスの感染拡大で「遠隔」「非接触」がキーワードとなり、現在保有する70台はイベントなどでフル稼働中だ。新型コロナは本業の航空サービスに大きな打撃だが、「瞬間移動で世界をつなぐ」というビジョンを掲げて動き出すアバターロボット事業には追い風となっている。

 「こんにちは。今日はどんな本をお探しですか?」

 新型コロナの影響で4月8日から5月14日まで営業を自粛していた「二子玉川 蔦屋家電」(東京・世田谷)。自粛の期間中、実はある“来店客”を迎え入れていた。スタッフが話しかけていたのは、ディスプレーに客の顔が映し出された自走式ロボット「ニューミー」だ。

 ニューミーにはディスプレーとカメラ、マイクを内蔵するタブレット端末のような「顔」と自走できる「足」がある。ディスプレーにはユーザーの顔が映し出されており、まさに分身というわけだ。客はロボットを遠隔操作し、店内を動き回る。この日は事前に応募した7人が、スタッフとのマンツーマンの接客を楽しんだ。

 今回のイベントは新型コロナを受けて急きょ企画したため、提案した本をその場で販売することはできなかった。ただ、システムを構築すれば、シームレスに通販サイトへ誘導して売り上げにつなげることも可能だ。

 リアル店舗は今、来店客の減少に苦しむ。外出自粛の要請が解かれても、以前ほどの客足には戻らない可能性が高い。蔦屋家電の藤本剛店長は「アバターロボットでの接客に、小売りの未来を感じた」と話す。リアル店舗が持つ接客力を生かしつつ、足を運ばない客にアプローチする道が開けるからだ。

 接客を担当したスタッフは「画面越しだと逆に照れずに相手の表情をしっかり確認でき、リアルな接客以上の関係がきずける印象」と手応えを感じていた。

 アバターロボットを開発しているのはANAHD傘下のスタートアップ企業、アバターイン(同・中央)だ。