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名称を発表した理化学研究所の松本紘理事長

 理化学研究所(理研)は5月23日、スーパーコンピューター「京(けい)」の後継として開発中の次期スパコンを「富岳(ふがく)」と名付けたと発表した。名称を19年2月から公募し、性能の高さや利用のすそ野の広がりが伝わるとして選んだ。

 理研が通称「ポスト京」の開発に着手したのは2014年。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が開発の進捗を評価し、18年11月に構築を決定した。理研と共同開発してきた富士通は19年4月、ポスト京の製造を始めたと表明。理研の計算科学研究センター(神戸市)で19年8月まで稼働する京と置き換える形で設置する。

 「2位じゃダメなんでしょうか」。09年の事業仕分けでの蓮舫参議院議員の発言で、国内のスパコン業界は処理スピード世界1位を目指す意義を見つめ直すことになった。理研と富士通が共同開発した京では、国内の研究機関や企業の科学技術計算を担わせるとともに、世界一のスピードを追求して国内のスパコン技術の引き上げを狙った。世界のスパコンランキングに初めて登場した11年6月に首位に躍り出たが、翌年には米国の「セコイア」に首位の座を明け渡した。

 そんな京の後継機となる富岳では「(処理スピードでの)1位は意識しているが、その競争をしているのではない」と理研の岡谷重雄副理事は話す。コンピューターを大量に並べるスパコンは、効率こそ落ちるものの台数を増やせば処理スピードは上がる。むしろ今はコンピューターの電力消費が運用コストと環境の面で問題になりつつある。もう処理スピードだけを追う意義はなくなってきたとの主張だ。

開発元の富士通が先に公開していた半導体と計算ユニット(写真:富士通提供)

 次世代スパコンの富岳では、京の100倍のスピードを、3倍程度の消費電力で実現することをめざしている。同じ消費電力当たりの性能でいえば約30倍に進化させる計画だ。「消費電力当たりの性能では圧倒的な世界一を達成できる」と理研の松岡聡・計算科学研究センター長は話す。

 内部構造や半導体を含めたスパコン全体の設計を工夫して消費電力を減らし、世界一の効率を達成できれば利用シーンは広がる。同じ構造の小規模スパコンを企業が導入したり、海外にスパコンを売り込んだりできる。

 「スピードより効率」。京とは別の世界一を目指す富岳は21年に研究者への供用を始める予定だ。

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