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 ビックカメラは、2021年8月をめどに全店に電子棚札を導入する。

 値札を張り替える店員の手間を大幅に減らしながら、インターネット通販(EC)などの競合に対抗するために商品価格を瞬時に変更するのが導入の理由の1つ。だが、それだけではなく、ビックにはもう1つ狙いがあった。

2019年2月に開業した町田店。約10万点の商品すべてに電子棚札を導入した

 電子棚札はネットワークにつないで情報を一元管理し、表示価格を瞬時に変更できる仕組みだ。ビックなど家電量販店では、競合店やECサイトの価格をチェックした結果、店頭価格が1日に複数回が変わるのはざら。そのたびに新しい価格をプリンターで印刷し、切って棚に張る作業をしていた。特に週末は価格の変化が激しく、「従業員総出でやっても優に合計1時間はかかる作業量」(同社)になっていた。

 ビックは今年2月に開店した町田店で電子棚札を導入。ほぼすべての商品に付けた。その数は約10万個。価格変動の激しい洗濯機やエアコンなどの家電だけでなく、カメラバッグや文具、ミニカーなど、価格変動が少ない商品にも電子棚札を導入した。

 電子棚札が担う機能が、価格変動対策だけではないからだ。電子棚札を導入するもう1つの狙いは、取り扱い数が前年比1.5倍の伸びを示す「取り置きサービス」向けに活用することにある。

 「取り置きサービス」とは、顧客がビックのECサイトで購入した商品を、リアルの店舗で受け取れるサービスだ。店舗では、受け取りに来た顧客のために、ECで注文のあった商品をあらかじめ集めておく必要がある。このピッキング作業に電子棚札を使う。「棚札を光らせることによって、探している商品がどこにあるか一目でわかる」(同社)。

 取り置きサービスは2015年に全店で始めて以降、利用者が右肩上がりで増えており、東京・有楽町店などでは専用のピッキング担当者を配置。年々、店舗の作業量も増えている。電子棚札の導入には、この拡大するピッキング作業の効率を上げる狙いもあるわけだ。

 取り置きサービスから見ると、店舗はいわばECのための倉庫だ。だからこそビックは、ピッキング作業を効率化するために物流倉庫などで広く用いられる電子棚札をほぼ全商品に付けるのだろう。

「取り置きサービス」は扱い高が急増している

 ビックにとって取り置きサービスの拡大は、単に売り上げ増以上の意味がある。「取り置きを始めることで、店舗とECの距離が一気に近くなった」(中川和幸営業部課長)。ビックグループのEC売上高は、19年8月期に初めて1000億円を超え、EC化率は11%超に上がる見通し。

 これは、店舗でアプリ登録を促すなど、自社の店舗とEC間での地道な送客努力が実ったのが一因とみている。取り置きはECで注文するが、売り上げは店舗側に立つため、店舗の従業員が来店した顧客にECを案内することに壁がなくなり、EC利用者を増やすのに一役買ったという。電子棚札の導入はこうした「オムニチャネル戦略」の強化という側面もある。

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