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キューバ危機を乗り切ったケネディ米大統領(当時)。米ソは結局、核戦争を回避した(写真:UPI/アフロ)

 米国のトランプ政権は5月15日、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対する製品供給を事実上禁じる制裁措置に踏み切った。米中の紛争は「貿易」のフェーズを超え、次なるフェーズに突入した。米国内では、旧ソ連と冷戦を繰り広げた時代と同様の動きが目に付く。だが、当時の米ソ関係を支えていた重要な要素が欠けている、との見方がある。

 次なるフェーズには二つの見方がある。一つは、米国が貿易摩擦から「経済ナショナリズム」の確立に歩みを進めるフェーズ。経済ナショナリズムは、米中にまたがるサプライチェーンを分断することで米国の優位性を維持するとの考えだ。ピーター・ナバロ大統領補佐官(通商担当)や、かつて首席戦略官・上級顧問を務め「影の大統領」とまで呼ばれたスティーブ・バノン氏が唱えた。いよいよ、この考えが実行フェーズに進む。

 一方、米中関係に詳しい呉軍華・日本総合研究所理事は、経済面と異なるフェーズも想定する。「トランプ政権は今後、チベットやウイグル、台湾といったテーマに焦点を当てる可能性がある」

 このように局面が進展する背景には、かつて冷戦期にソ連(当時)に向けられた反ソ感情と同様のものが米国内で沸き上がっている事情がある。その証左の一つが、米国で注目を集めている「直面する危機に対する委員会:中国(the Committee on the Present Danger: China)」の設立だ。バノン氏らが発起人に名を連ね、その名称は米ソ冷戦時に設立された「直面する危機に対する委員会」にちなむ。オリジナルの同団体は、ソ連と対決すべく、米議会、メディア、国民に結束を呼び掛けた。

 米中の対立が次の段階に進んだ時に、中国が“反撃”に使える手段は少ない。保有する米国債を大量に売却する、レアアースの対米輸出を止める、といった手段を提案する中国有識者もいるが決定的カードにはなりそうにない。米国債の価値が下がれば、中国自身が含み損を抱えることになりかねない。

 米国の動向に詳しい識者は「中国はトランプ政権の動きを読み誤った。貿易赤字を重視するトランプ大統領がある程度満足するディールを早い段階でまとめれていれば、2000億ドル分の対米輸出に対する税率の25%への引き上げはなかったかもしれない」(外務省OB)と口をそろえる。