(写真/清水真帆呂)
(写真/清水真帆呂)

 カルビーCEO(最高経営責任者)やRIZAPグループCOO(最高執行責任者)を務めたプロ経営者の一人、松本晃氏が起業することが明らかになった。

 松本氏はカルビー会長兼CEOとして2009年6月からの9年間で売上高を2倍近くに伸ばし、昨年6月にはフィットネス大手、RIZAPグループのCOOに就任した。しかし、業績不振企業の再建方法などを巡って経営陣の一部と意見が合わず、昨年10月にはCOOから外れ、今年6月退任することとなった。プロ経営者としては初めての“挫折”となったが、早くも次に向けて動き始めた。

 新たなビジネスは、エネルギーを使わずに住宅、自動車、衣料など様々なものの温度を下げることの出来る素材「ラディ クール」の販売。米コロラド大学の物理学者、楊栄貴(ヤン・ロングイ)教授が開発し、2017年2月に発表したものだ。フィルム形状の場合、微少なガラス球体をポリマー構造(重合体)にして特殊なフィルムで挟み、一方をアルミコーティングする。

 自然界では温度を持つ物質は、温度に応じた量の赤外線を放射している。この「ラディ クールはその赤外線の波長を長くすることができる。遠赤外線は、宇宙空間まで放射される性質があるので、熱を一緒に運び出す」(松本氏)という。

 例えばこれを自動車などに張った場合、日中、太陽で熱せられ、車体の表面温度が40℃程度になっても20℃程度まで下げられるという。フィルムだけではなく、塗料も開発しており、繊維も間もなく開発を終えるという。

 ラディ クールは、楊教授が開発した後、中国の投資家がその使用権を取得。松本氏は日本での使用権を得た。5月には販売会社、ラディ クールジャパンを設立し、会長に就任している。カルビー時代に同社製品を中国に輸出する事業で知り合った貿易会社の中国人経営者との共同事業だが、既に一部の大手メーカーなどに売り込みに動いており、近く販売開始を正式発表するという。

 数年前まで脚光を浴びたプロ経営者だが、最近はLIXILグループの瀬戸欣哉・前社長兼CEOが、経営方針の違いからオーナー家出身の潮田洋一郎氏に事実上、解任され“紛争”になるなど、受難が続いている。松本氏もそうしたケースに近かったが、71歳の今、改めて新事業に乗り出すことで心機一転を図る。

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