(写真/共同通信)
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 膿を出し切ったと言うけれど──。フィットネス大手、RIZAPグループが5月15日に発表した2019年3月期決算は、売上高が前の期に比べ82%増の2225億円と過去最高になったものの、193億円の最終損失に沈んだ。同社は昨年11月、それまで159億円としていた最終利益の予想を突然、70億円の最終赤字に下方修正しており、下方修正時よりも赤字が一段と膨らんだ形だ。

 RIZAPはここ2年程の間に、M&A(合併・買収)で多くの企業を傘下に収めてきた。損失拡大の要因は買収企業の再建が遅れたことや、再生の難しい一部企業を売却したことによる損失、さらに構造改革費用を前回修正より約47億円積み上げたことなどによるという。

 確かに損失は出し切ったのだろう。20年3月期は売上高はほぼ横ばいだが、5億円の最終黒字に復活するとの予想を出している。

 しかし、これで強い体質に生まれ変わったと言うにはまだ不安が残る。

 一つは前期の赤字の要因でもあるM&A。同社はこれまで不振企業を割安に買収する際に発生する「負ののれん」による多額の利益を計上してきた。そのため昨年11月以降、新規M&Aを停止したことが赤字の要因になった。だが、根底には買収企業の負ののれんにしか頼ることができないビジネスプランの弱さがある。

 例えば業績が回復せず、今回売却を決めた戸建て住宅建設のタツミプランニング(2016年2月買収)について、瀬戸社長は「個人の自宅のリビングで(RIZAPの本業である)フィットネスができるようにリフォームする」事業を考えていたというが、日本の住宅事情を考えればとても現実的とは思えない。他にも本業とのシナジーの見えにくい買収は少なくない。

 RIZAPは12人の取締役を6人に減らし、瀬戸社長以外はすべて社外取締役にする思い切ったガバナンス改革を実施するとしている。問題となっているM&Aも社外の目でチェックすることになる。ただほぼ社外の人間で構成される取締役会はあくまでチェックの機能だ。具体的な経営戦略は取締役の下にいる11人の執行役員に委ねざるを得ないだろう。執行役員の体制はこれまでと大きな変化がないだけに、買収企業の選別がこれまでと変わるかどうか不安は残る。

 また経営管理を徹底するために、総資本営業利益率、総資産回転率など11の管理項目を設定し、グループの経営状況をチェックするという。だが、重要なのは数値管理を具体的な事業の改革につなげられるかどうか。

 管理項目の中には「棚卸し資産」「売上債権」「仕入れ債務」の回転期間もある。これらはいわゆる「キャッシュ化速度」の構成要素である。企業が仕入れを行い、加工・販売して現金を回収する速度を上げるための管理項目だ。キャッシュ化速度を上げるためには、在庫や売掛金の圧縮・効率化などを組み合わせた仕組みを作り、全社に広げなければ効果を生まない。どの程度そうしたことが実現できるのかも今は見えない。

 体質改善に挑むRIZAPは“リバウンド”せずに、改革をやり遂げられるか。今期はその力が問われることになる。

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