
日産自動車は16日、高速道路で手放し運転が可能となる新技術を発表した。車両に搭載したカメラやレーダー、高精度地図などのデータを組み合わせ、自車の周囲360度の情報と地図上の正確な位置を把握できる。まずは今秋「スカイライン」の既存モデルに搭載する。日産では元会長の逮捕や検査不正問題など不祥事が相次いでいる。技術の優位性をアピールすることで、ブランド力の回復を図る狙いもありそうだ。
新技術「プロパイロット2.0」はナビゲーションシステムと連動する。高速道路に入ると、ナビが適切な走行ルートを指示し、運転を支援する。運転手がすぐにハンドルを操作できる状況にある限り、同一車線内で手を離すことが可能になる。ハンドルにはタッチセンサーを採用、車内のカメラで運転手が前方を注視しているかを確認するなど安全面の備えも万全だという。
位置情報では、まずGPS(全地球測位システム)で大まかな場所を把握。7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーで周辺の車両や白線、標識を検知する。それらの情報を最新の3D高精度地図データと合わせることで、車両の位置を1メートル前後、左右5センチ以内まで正確に表示する仕組み。運転手はメーター部分のモニターで、周囲にあるトラックや乗用車、二輪車の様子まで確認できる。
日本ではこれまで「手放し」を大々的に告知できる車はなかった。各社は自動運転技術の開発を進めており、独BMWが今年4月に「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」を19年夏ごろに導入すると発表したのが最初だ。日産は高精度ナビと連動させることで「BMWよりもハンズオフの範囲を広げている」(自動車評論家の河口まなぶ氏)。
モータージャーナリストの塩見智氏は「『ハンズオフ』という用語のインパクトは大きい。国産車ではしばらく日産だけの技術となり、技術面での優位性はあるだろう」とみる。日産のAD/ADAS先行技術開発部の飯島徹也部長は「どれをとっても世界最高レベル。いまできる全ての技術を導入した」と胸を張る。
商品展開ではまず、現行のスカイラインに搭載する。日産は22年度までに20以上の新型車を出す計画で、同技術は20の市場で20車種に搭載し年間100万台規模の販売を見込む。
中畔邦雄副社長は「スカイラインは日産のシンボリックな車で、過去にも新技術を取り入れている」と話すが、関係者からは「仮に不祥事などがあると売れなくなる。リーフやセレナなどで採用するのは怖かったのではないか」との声も漏れる。
14日の2019年3月期の決算会見では、西川広人社長が「技術で他社に先行していく。先進的な技術を使いやすい形で届けるチャレンジを続けていく」と強調。そして、間髪入れずに出してきた今回の新技術。足元では、経営問題のイメージ悪化などで販売を落としているだけに、「技術の日産」の面目躍如となるのだろうか。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「1分解説」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?