(写真:ロイター/アフロ)
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 シェアハウスを巡る不正融資が問題化したスルガ銀行(静岡県沼津市)は15日、新生銀行、家電量販大手のノジマ(横浜市)と業務提携すると発表した。新生銀とは住宅ローン、ノジマとはクレジットカードなどでそれぞれ提携する。ともに個人向けのビジネスに強みがあり、個人向け融資に強みがあるスルガ銀と相乗効果があると判断した。新生銀は将来の資本提携も視野に入れているが、先行きははっきりしていない。

 「スルガ銀の提携先は金融庁が探している。なかでもノジマは金融業参入に積極的で救済企業として最も有力。一方、公的資金が注入され、金融庁の意向を無視できない新生銀はカウンター(対抗馬)として最後まで候補に残るだろう」。新生銀とノジマについて金融関係者の間ではそう噂されてきた。蓋を開けてみると、その2社がスルガと提携することになった。

 ノジマは、傘下にインターネットソリューション事業のニフティを持ち、家電量販店を多店舗展開している。スルガ銀もネットを駆使した個人融資に力を入れており、クレジットカードを共同で発行して、ネットでの金融サービスなどを提供する。スルガ銀の顧客にノジマ店舗での割引など営業戦略面でもタッグを組む。

 一方の新生銀。スルガ銀は外国人などに顧客層を広げて規模を拡大してきた独自の審査モデルがある。住宅ローンで新生銀が融資判断できない借入希望者に対し、スルガが融資するなどの協力を想定している。また、事業承継などニーズの高い法人業務でも互いのノウハウを補完し、事業拡大につなげるという。

 スルガ銀を巡っては2018年ごろからシェアハウス問題が表面化。投資用不動産融資で多くの不正が見つかり、金融庁がガバナンス(企業統治)体制に問題があったとして同年10月、6カ月間の一部業務停止命令を出した。今年4月、命令が解けたが、信頼失墜で新たな成長モデルを描きにくくなっており、スルガ銀は他社との提携を模索していた。

 候補には新生銀、ノジマのほか、りそなホールディングス(HD)、SBIHDの企業名が挙がった。しかし、スルガ支援で悪いイメージがつくことを恐れ、提携効果を疑問視したりそな銀は撤退、SBIHDはレースから距離を置いた。残ったのはノジマと新生銀だった。多角化経営を進めるノジマは、既に5%弱のスルガ株を取得。さらなる資本参加に積極的な姿勢を示している。

 気になるのは今後の新生銀の出方だ。スルガ銀は一連の不正問題で財務が急速に悪化しており、資本提携による信用補完も必要となっている。新生銀は今回の提携について「当行として、スルガ銀行の意向を踏まえ、資本提携を含めたさまざまな将来の選択肢について検討を行う可能性を排除するものではありません」とコメントしているが、スルガ銀との関係強化にどこまで踏み込むかは未知数だ。もともと「新生銀は当初、提携に前のめりではなかった」(別の関係者)との声もあり、スルガ銀の視界が完全に開けたとはまだ言えない状況だ。

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