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 大和証券グループ本社と提携して、全国の郵便局およびゆうちょ銀行の直営店で投資一任サービスを始めると発表した日本郵政。背景にあるのは、成長戦略が描けない傘下のゆうちょ銀行に対するテコ入れだ。

 その焦りは、4月に日本郵政が発表したかんぽ生命の株式売却発表からも見て取れる。

ゆうちょ銀行は大和証券の手を借りて、傘下の直営店および大型郵便局で投資一任サービスを始める。(写真:Bloomberg / Getty Images)

 かんぽ生命とゆうちょ銀行は、政府が半数以上の株式を保有する日本郵政が親会社であることから、政府による間接出資であるとの批判は根強い。郵政民営化法でも、株式の早期売却は義務付けられている。売却によって、日本郵政のかんぽ生命に対する出資比率は89%から65%程度に下がった。同社がかんぽ生命株を売り出すのは2015年の郵政グループの3社同時上場の時以来だ。

 5月15日発表の日本郵政の決算でも、かんぽ生命はマイナス金利導入後の保険料改定で収益性を確保、運用面でも外国債券の積み増しや運用先の多様化が貢献した。収益性の改善に一区切りついた点が、かんぽ生命株の売却につながったとみられる。

 一方のゆうちょ銀行はどうか。日本郵政は当面、ゆうちょ銀行に対する89%の出資は続ける方針だ。「ゆうちょ銀行はまだ『独り立ち』できる段階ではない」。ある銀行関係者はこう話す。融資ができないゆうちょ銀行は、金融商品の販売にかかる手数料と運用益が主な収益源。日銀のマイナス金利政策が長期化する中で、運用収入を大きく伸ばすことは難しい。そこで、もう一つの柱である手数料収入の強化が課題とされていた。

 投資一任サービスの内容は、ラップ型投資信託の販売と言われている。ラップ型投資信託は、値動きの異なる資産に投資した投資信託を複数組み合わせた、運用一任型の投資信託。株式や債券、不動産投資信託(REIT)などに分散投資を行う点はバランス型投信に似ているが、専門家のアドバイスに基づき、経済動向や市況の変化に応じて配分比率を見直すのが特徴だ。「おまかせ運用なので極端な話、販売員のスキルが低くても売りやすい商品」と、大手証券関係者は明かす。また、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「金融庁が顧客本位の業務運営を金融機関に求めて以降、投信の頻繁な売買は自粛されている。頻繁な売買の必要がないラップ型ならば売りやすいと思ったのだろう」と話す。

 郵便局における投資信託の販売は日本郵政公社時代の2005年に始まった。だが、「販売員の運用知識の底上げが課題だった。毎週のように各地の郵便局に行っては研修を実施していた」と、郵便局向け商品の営業をしていた元大手運用会社社員は明かす。ラップ型投信ならば、こうしたな懸念も比較的解消されやすい。

 手数料面においても、通常の投資信託よりもうまみがある。投資信託の購入時にかかる販売手数料(1.5%前後)が販社であるゆうちょ銀行側に入るのはもちろんだが、購入後に毎年かかる信託報酬(1~2%)も、投信を運用する運用会社とゆうちょ銀行で分け合う形となる。複数の投信を組み合わせている分、ラップ型投信の信託報酬は通常の投資信託よりも高めだ。

 折しも4月から、ゆうちょ銀行の預入限度額は1300万円から2600万円に引き上げられた。地方を中心に資金を移す動きが出ると予想されるだけに、こうしたマネーの受け皿としてラップ型投信を販売の中核に据えたい――。日本郵政にはこのような思惑があると考えられる。

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