
日産自動車の業績が落ち込んでいる。14日に発表した2019年3月期連結決算の営業利益は前の期比44%減の3182億円となった。日産は経営計画で営業利益率8%を目指してきたが、19年3月期は同2.7%。販売金融事業を除けば0.9%と極めて低水準だ。現在は米国で過度なインセンティブ(販売奨励金)に頼ってきた販売手法を見直しているが、海外市場が不透明な時こそ足腰となるべき、国内販売の低迷が痛い。
「昨年度の事件があり、ルノーとの関係を含め事業に集中できなかった。それが事業の結果に表れた」。14日、横浜市内の本社で決算会見に臨んだ西川広人社長兼CEO(最高経営責任者)はこう話した。「昨年度の事件」とは言うまでもなく、元会長のカルロス・ゴーン氏の逮捕だ。西川社長は記者会見で経営の混乱とそれに伴う業績低迷などについて改めて頭を下げた。
日産は4月24日に19年3月期の業績を下方修正している。米国で主力セダン「アルティマ」などの無段変速機(CVT)の保証期間を延長したことや販売減少の影響で約1000億円の減益要因となった。米国市場は過度なインセンティブに頼りながら販売台数を稼いでいた体質の改善を図っている最中。保証の充実は顧客が離れていかないための「守り」のコストのようなものだ。
今期の業績見通しでも営業利益は2300億円と19年3月期に比べ27%減となる。固定費の削減など構造改革を進めるが、「利益率8%」の目標を取り下げ「22年度に6%」を新たなターゲットに設定した。
米中貿易摩擦で消費が冷え込んでいる中国、ブランド力で劣る欧州には、浮上の芽として過度な期待はできない。そうとなれば、下支えとなるべきは国内市場だが、元会長のゴーン氏の逮捕以来、経営の混乱で悪化したブランドイメージの改善はそう簡単ではないようだ。
日本自動車販売協会連合会によると、日産の4月の国内販売は2万1812台で前年同月(2万5005台)と比べ1割以上減少した。2019年の4月までの国内販売の累計は119万7785台と前年(120万3574台)から微減にとどまっているものの、5カ月連続で前年割れしているのは、主要自動車メーカーでも日産だけだ。
今後はどうか。年後半にはSUV(多目的スポーツ車)「ジューク」の新型車投入が予定されているが、ジュークの販売台数は年5000台程度で、大きなインパクトは期待できない。これまでに4度起訴されたゴーン氏との「押し問答」は静まりつつあるが、6月の株主総会に向けては筆頭株主である仏ルノーとの主導権争いなど経営問題も表面化していく可能性がある。
日産の株価はさえない。ゴーン氏が最初に逮捕された翌日の18年11月20日、日産の株価は約5%下がって950円となった。株価はそれ以来1000円に届くことなく、14日も一時年初来安値を更新し、終値は840円となった。20年3月期の年間配当予想は40円で、17円の減配となる。
あるアナリストは「日産はゴーン氏のもとで拡大戦略を貫き、販売台数増と部品価格の抑制を追求してきた。それを見直すのはいいが、材料になる経営資源があまりに少ない」と指摘する。「一時は客足が明らかに弱まっていた」(都内の販売店)という販売状況からは脱しつつあるのだろうが、これまでの成長を支えた幹部の流出も相次いでいる。日産の稼ぐ力を足腰から鍛え直すことはそう簡単なことではない。
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