いすゞ自動車は13日、2019年3月期の連結決算を発表した。売上高は前の期比3.8%増の2兆1491億円、営業利益は同6%増の1767億円と過去最高益だった。国内で小型トラック「ELF(エルフ)」の販売数が好調だったほか、タイではピックアップトラックの販売が51万台と前の期より8万8000台増えた。

ただ20年3月期は消費税引き上げ前の駆け込み需要効果が剥げ落ち、「我慢の年になる」(企画・財務部門統括の南真介取締役常務執行役員)。売上高はほぼ横ばいを維持するものの、鋼材価格や物流費の値上げ、為替変動が影響し営業利益は6.7%減の1650億円の見通しだ。それでも、「苦しい中ではあるが研究開発費の投入は対応したい」と片山正則社長は言う。今期は研究開発費に約1020億円を投じ、「そのうち3割をCASEにあてる」(片山社長)計画だ。(CASEについての参考記事はこちら)
ライバルの商用車大手はCASE関連の開発に乗り出している。
トヨタ自動車の子会社である日野自動車は独フォルクスワーゲン(VW)と電動化技術の開発で手を組み、三菱ふそうトラック・バスは独ダイムラー傘下でEV(電気自動車)トラックの開発を進めている。スウェーデン・ボルボ傘下のUDトラックスは自動運転トラックの実証実験を急いでいる。
提携解消は「他社へのメッセージでもある」
商用車メーカーの多くが、大手との提携によってCASE開発を乗り越えようとする一方で、いすゞは米ゼネラル・モーターズとの資本提携を2006年に解消。直後、トヨタから5.89%の出資を受けたが、18年に資本提携を解消した。
CASEの開発には巨額の投資がかかる。世界規模の自動車メーカーの後ろ盾がない中どうやって戦っていくのか。
13日の記者会見では「トヨタと距離が遠くなったわけではない」とし、トヨタ・マツダ・デンソーが加わるEV技術の開発会社「EVシー・エー・スピリット」にも参画していると明らかにした。
今後について、片山社長は「トヨタとの資本関係の解消は他社へのメッセージでもある。(18年に提携を発表したパワートレーンを手がける)米カミンズに限らず、事業・技術など最適なパートナー作りをしていく」とし、自動車メーカーに限らず多様な企業との提携戦略を視野に入れていく考え。合従連衡が活発な商用車業界で、いすゞが台風の目となる可能性がある。
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