エーザイが5月13日に発表した2019年3月期決算は連結売上高が前の期比7%増の6428億円、当期純利益が同22%増の634億円と、薬価改定の影響などをはねのけて業績を伸ばした。20年3月期も連結売上高で前期比6%の伸びを見込み、当期利益は同14%増の720億円と好調をキープする見込みだ。

 好業績のけん引役は、抗がん剤の「レンビマ」(一般名レンバチニブ)だ。内藤晴夫CEO(最高経営責任者)は、13日の決算説明会でレンビマのポテンシャルについてしきりに強調した。

5月13日、決算説明会でプレゼンするエーザイの内藤晴夫CEO
5月13日、決算説明会でプレゼンするエーザイの内藤晴夫CEO

 19年3月期の同薬の売上高は前の期比94%増の626億円だったが、提携先の米Merck(メルク)からの契約一時金や、販売額に応じたマイルストーン収入を合わせると既に1000億円を超えると説明。20年3月期には売上高がさらに倍増して1160億円になる見通しを示した。「レンビマは2018年度に1000億円を超える資産となった。次はいつ2000億円を超えていくかが重要だ」などと語り、大型製品化への期待を表明した。

 レンビマは、腫瘍組織における血管の新生や腫瘍の増殖に関わる信号ががん細胞内に伝わるのを妨げるマルチキナーゼ阻害薬だ。甲状腺がんに対して15年2月に米国、同年3月に日本で承認を取得したのを皮切りに、これまでに50カ国以上で承認を得た。腎細胞がんに対しては、エベロリムスという抗がん剤との併用で、米国、欧州など45カ国以上で、肝細胞がんに対しては日本、米国、欧州、中国、韓国など40カ国以上で承認を取得している。

 レンビマは、承認の翌年度の16年3月期に115億円、17年3月期は215億円、18年3月期には322億円へと順調に売上高を伸ばしてきたが、飛躍的な売り上げ拡大ペースに入ったのは18年3月にメルクと戦略提携を契約し、米欧アジアの様々な国で協業を始めてから。これまでにメルクの免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダを併用する11本の臨床試験をスタートさせ、残る2本の臨床試験も今年度中にスタートさせる。

 メルクとの契約では、一時金や開発や販売の進展に伴うマイルストーン、研究開発費の償還などで、最大57.6億ドル(約6300億円)を受領することになっているが、19年3月までに13.8億ドル(約1500億円)を受領し、今年度も既に2億ドル(約219億円)の一時金の受領が決まっている。

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