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ベネッセの通信教育「進研ゼミ」の小学講座

 ベネッセホールディングス(HD)が、再び岐路に立たされている。5月10日に同社が発表した2019年3月期の連結業績では、売上高が4394億円、営業利益が162億円と、前の期比で増収増益となった。国内教育事業や介護・保育事業などが寄与した格好だが、同時に中核事業である通信教育「進研ゼミ」の新規会員獲得で課題が浮き彫りになった。

 小学生から高校生を対象とした「進研ゼミ」と、未就学児を対象とした「こどもちゃれんじ」の19年4月時点の会員数は262万人。前年よりも5万人増えたが、目標にしていた274万人を大きく割り込んだ。

 原因は、4月号からの入会が対前年でマイナスになったこと。教育・入試改革に対応した新たな商品に反応した『教育熱心層』の獲得は2月ごろまで順調に進んだが、その後、競合他社のサービスと比較検討する傾向のある『教育選択流動層』の獲得が大きく計画を割り込んだ。リクルートマーケティングパートナーズが提供する「スタディサプリ」など、スマートフォンなどを活用した競合サービスが増えていることなどが背景にあるとみられる。

 進研ゼミ(こどもちゃれんじを含む)の会員数は2000年前後、400万人を超えたこともあったが、競争激化などにより徐々に低迷。14年4月には365万人となり、同年起きた個人情報流出事件が減少に拍車をかけた。16年4月の243万人を底に徐々に回復しているが、ペースは遅い。

 これまでベネッセHDは、会員獲得の多くをDM(ダイレクトメール)に頼ってきた。だが、入会を煽(あお)るようなDMの文言や個人情報流出事件などに批判が高まり、会長兼社長だった原田泳幸氏の時代にDMに頼らないマーケティング体制の構築を目指した。ところが、会員数が急減し、その後は会員増を目指して16年10月に社長に就いた安達保氏の下で、DMの良さを再び生かす路線に回帰してきた。

 その結果、会員減少は底をつき、増加に転じてきたものの、ここにきてDMで新規会員を獲得する方法は再び壁に直面しているようだ。「教育選択流動層」に対してDMは思うような効果を発揮しなかったからだ。同社の副社長で事業会社ベネッセコーポレーションの小林仁社長は、「潜在顧客リストの顧客に何度もアプローチする手法に依存する体制から脱却しないといけない」と話す。

 今後は、DMを使った非効率な販促を抑制し、既存会員の継続率を高める方針に転換。4月の会員数で毎年3%程度の安定成長を目指す。既に、手ごたえはあるという。デジタルの特性を生かした教材のほか、英語必修化や入試改革に向けた商品などが評価され、今年3月号までの受講者が4月号も引き続き受講する「4月継続率」は、「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」の対象18学年中12学年で前年比で増加し、6学年で過去最高を更新した。

 安達社長は「いつかはこうなると思っていた。(状況が明らかになった)3~4月ごろに方針転換を決めた」と話す。2020年度までに会員数300万人を目指していたが、「その目標も第一にしない」(小林副社長)という。

 ベネッセは、これまで何度も「脱・DM依存」と「DM回帰」との間を揺れ動いてきた。安達体制の下では、会員数の急減に歯止めをかけ、成長軌道に戻るために、DMを再び重視して会員数を追求してきた。今後は販売戦略を再構築して、DMに依存せずに利益重視の成長を目指すというが、DMが同社の最大の武器だったために、戦略転換は容易ではなさそうだ。 

■変更履歴
記事掲載当初、本文中で「帰路」としていましたが、「岐路」に修正します。本文は修正済みです [2019/05/13 19:20]
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