
SUBARU(スバル)は5月10日、2019年3月期の連結決算を発表した。18年6月に就任した中村知美社長にとって初めてとなる通期決算の発表は、数百億円に上るリコール(回収・無償修理)費用の計上や国内の完成車検査不正、電動パワーステアリングの部品不良による群馬製作所の操業停止の影響で、営業利益が前の期比で48%減の1955億円と大幅減益を余儀なくされた。
19年3月期は生産台数が3年ぶりに100万台を割ったものの、20年3月期は生産、販売ともに年105万台超まで増える見込みで悪循環から抜け出して復活を期す1年となる。しかし、そんな決算を東証の適時開示情報閲覧サービス「TDnet」で開示する前に、自社のサイトに掲載するというミスを起こし、自ら水を差してしまった。
「米国での販売は堅調。稼ぐ力は落ちていない」。19年3月期が大幅な減益決算になったにもかかわらず、中村社長の言葉は力強かった。確かにスバルの米国での1~4月の販売台数は、多目的スポーツ車(SUV)「フォレスター」や「アセント」の寄与で前年同期比5.5%増の21万4042台と、全需が減少傾向にある中、好調さが目立つ。
4月まで89カ月連続で前年同月実績を上回り続けている。今秋には主力車種の1つ「アウトバック」の刷新を控えており、米国での販売台数の増加は今後も続く可能性が高い。検査不正の影響があった国内販売でも19年4月の新車販売が18カ月ぶりに前年同月比でプラスとなった。
20年3月期から会計基準を日本基準からIFRS(国際会計基準)に変更するため、単純比較はできないが、営業利益は2600億円と増益を見込む。従来の日本基準で比較すれば前期比28%の増益だ。前期に計上したリコール対応などのクレーム費の減少が953億円の増益要因となる。検査体制が整う今下期以降は、群馬製作所の操業度を引き上げる見通しだ。「販売台数、売り上げ、利益ともに下期には強く出る。上期4に対し、下期6のイメージ」との見通しを中村社長は示す。
そんな復活にかける意気込みの強さが「フライング」につながってしまったのかもしれない。もともと、スバルは会見時間に合わせ、10日午後1時ちょうどに決算を適時開示するとしていたが、午前9時55分から10時10分にかけて自社のサイトに決算情報を掲載。「システムのトラブルではなく人為的なミス」(同社)だという。開示した20年3月期の会社予想が営業利益で3100億円超を見込んでいた市場予想の平均(QUICKコンセンサス)を下回ったこともあって、掲載後、東証の適時開示で決算情報を開示した10時25分までの間に株価が動意づき、10時5分には株価が一時前日比3%安の2448円50銭まで下げてしまった。
業績面では復活を期すといっても、検査不正やリコールからの信頼回復はまだ道半ば。そんな中ではわずかな「ミス」も避けたかったはずだ。経営を揺るがすような大きな問題ではなかったとはいえ、市場の信頼を取り戻す途上では痛いフライングとなってしまった。
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