
経営再建中のプラント建設大手、千代田化工建設の再建策が9日、発表された。株主の三菱商事と三菱UFJ銀行が総額1800億円を投融資する。千代田化工の経営危機は今回で3度目となり、過去2度とも三菱商事は救ってきた。3度目になっても、三菱商事が千代田化工を救う背景には、筆頭株主として、退くに退けぬ事情があった。
千代田化工が実施する第三者割当増資を三菱商事が引き受け、700億円を投じて千代田化工の優先株を取得する。ほかに三菱商事が900億円の長期融資、三菱UFJ銀行が200億円の劣後ローンで対応する。三菱商事は前機械グループCEO(最高経営責任者)の大河一司氏を、千代田化工の会長兼CEOとして送り込む。千代田化工の山東理二社長兼CEOは、社長兼COO(最高執行責任者)として残留する。
9日に発表した千代田化工の2019年3月期の最終損益は2149億円の赤字だった。三菱商事らの金融支援を受けて、債務超過を解消する。
あるアナリストは「三菱商事から見て、千代田化工の利益率は投資対象として出資すべき会社か疑問だ」と指摘する。プラントビジネスはリスクが高い割に、稼ぐのが難しい。工事が順調に進捗しても、粗利益率は10%前後であることが多く、工事に不具合が出れば、数百億円単位での損失が発生する。
それでも三菱商事が1600億円もの支援に踏み切ったのはなぜか。千代田化工が強みとするLNGプラントを手がけることができる会社は「世界で5社ほどしかない」(業界関係者)。三菱商事が収益の柱と位置づけるLNGプロジェクトに力を入れるため、千代田を支援したと見ることも可能だが、実際には三菱商事のLNGプロジェクトには日揮が参画するケースもあり、三菱商事は千代田化工とだけ蜜月な訳ではない。
にもかかわらず、三菱商事が支援を決断した背景にあるのは出資比率だと見る声は多い。過去2回の支援で、三菱商事は千代田化工の株式を33.39%保有する筆頭株主となっている。ある三菱グループの関係者は「出資比率が30%を超え、退くに退けないのだろう。LNGで組む相手は千代田化工だけではないのだから、本当は退きたいと思う」と指摘する。千代田化工が同業他社や投資ファンドなどに支援を要請した時期も、「三菱商事は支援規模を最小限にとどめたいようだ」(関係者)という声はあり、今回の支援がやむにやまれぬ状況であったことが分かる。
1600億円もの支援を決めたことで、三菱商事と千代田化工の関係性は変わる。山東社長兼CEOは「これまでは千代田の経営やマネジメントの独自性を尊重してもらってきたが、全く違うフェーズに入る。三菱商事のリスクマネジメントを中心としたノウハウを積極的に取り入れる」と話す。
三菱商事の垣内威彦社長は9日の記者会見で千代田化工への追加支援について「しっかり再生できるとの確信をもって決断をした」と話した。失敗が積み重なるごとに、深くなる三菱商事と千代田化工の関係。今度こそ、支援をしたリターンはあるのか。三菱商事と千代田化工の新しい二社体制の成果に注目が集まる。
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