LIXILグループの潮田洋一郎会長兼CEOらの解任を議案とする臨時株主総会の招集請求をしたが、取り下げる結果に。写真は英マラソン・アセット・マネジメントの高野雅永氏(左)と英ポーラー・キャピタルの小松雅彦氏(右)
LIXILグループの潮田洋一郎会長兼CEOらの解任を議案とする臨時株主総会の招集請求をしたが、取り下げる結果に。写真は英マラソン・アセット・マネジメントの高野雅永氏(左)と英ポーラー・キャピタルの小松雅彦氏(右)

 英米機関投資家らが5月9日、LIXILグループに対する臨時株主総会の招集請求を取り下げた。機関投資家らは昨秋に起きた瀬戸欣哉氏のCEO解任を巡る経緯がコーポレートガバナンス(企業統治)の観点から極めて問題だとして、解任を主導した潮田洋一郎会長兼CEO(最高経営責任者)のほか、山梨広一社長兼COO(最高執行責任者)の取締役解任を求めていた。

 だが、4月18日、潮田氏が5月20日の取締役会をもって取締役を辞任し、山梨氏も6月の定時総会で取締役を退任する意向を表明。会社側は機関投資家らに招集請求の取り下げを求めていた。当初、機関投資家側は「本当に辞めるのか信用できない」などとして態度を保留にしていたが、「書面により確認できた」として、正式に取り下げることにした。

 機関投資家側には大きな不満が募っている。ある機関投資家は「潮田氏、山梨氏が自ら辞めることになり、事実上、戦う相手がいなくなってしまった。辞任はガバナンス不全を理由にしておらず、はしごを外された感じだ」と漏らす。機関投資家と共同請求者に名を連ねていた現取締役の伊奈啓一郎氏は、「先日の潮田氏の辞任会見でも、ガバナンスの機能不全に対する反省の言葉は全く聞かれませんでした。従いまして、我々が目的としていたことが全て達成された訳ではありません」との声明を発表した。

 今後の焦点は、6月下旬に予定されている定時株主総会での、次期取締役候補の選任に移る。瀬戸氏は、自身や伊奈氏らのほか社外取締役で構成される8人の次期取締役候補を株主提案している。一方、会社側の指名委員会も人選を続けてきた。5月8日、会社側は指名委員会を開催したが、複数の関係者によると議論は紛糾し、候補を決めきれなかったもようだ。

 4月下旬には、LIXILグループの執行役ら10人の経営幹部が、指名委員会の委員長であるバーバラ・ジャッジ氏に宛てて、潮田氏が主導する経営体制を批判する文書を送付している。機関投資家らは傀儡(かいらい)政権にならないような人選を求めており、こうした動きが議論に影響を及ぼしていると見られる。

 大株主の中には「指名委員会が瀬戸氏の案を採用する望みを捨てていない」との声もある。だが、指名委員会が独自案を示した場合、定時総会に向けて激しいプロキシーファイト(委任状争奪戦)が展開されることになりそうだ。

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