富士フイルムホールディングスが5月8日発表した2019年3月期決算(米国会計基準)は営業利益が2098億円と過去最高益を達成した。けん引したのはヘルスケア事業。同事業は前の期比67%の増益だ。会見した助野健児社長は「内視鏡や医薬品など各事業の販売が好調に推移した」と胸を張った。

会見する富士フイルムホールディングスの助野健児社長
会見する富士フイルムホールディングスの助野健児社長

 富士フイルムは06年頃からヘルスケア事業を重点領域に位置づけ、バイオ医薬品の開発・製造受託や再生医療、細胞培養に必要な培地の販売などを手掛けてきた。その成果が出てきた格好だ。ただ、不安もある。再生医療の本丸とされる細胞医薬品の研究開発が期待通りに進んでいないのだ。

 細胞医薬品を手掛けるのが、14年に連結子会社化したジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)。17年3月期に悲願の黒字化を果たしたものの、19年3月期は赤字に転落。今年1月には19年3月期の売上高見通しを30億円から23億円に下方修正していた。助野社長は「細胞医薬品の治験を国内で進めているが、まだ水面下というのが実情」と明かす。今後、治験を進めていけば、黒字化も見えてくるというのが富士フイルムのスタンスだが、日本の治験は海外に比べてコストが高く、当面、厳しい収益環境が続きそうだ。

 18年1月に発表した米事務機器大手ゼロックスとの経営統合も、ゼロックスの一部株主の反発もあって一方的に買収契約が破棄されたまま。助野社長は「何も進展していない」と膠着状態が続いていることを認める。

 米中対立の再燃懸念が出るなど、世界経済の先行きが見通しにくくなる中で、新規事業の育成は富士フイルムにとって急務。過去最高益を記録しても消えない不安をどう払しょくするか。再生医療分野にかかる期待が膨らみそうだ。

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