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トヨタ自動車の豊田章男社長

 トヨタ自動車が5月8日発表した2019年3月期連結決算は売上高が前の期比3%増の30兆2256億円で初めて30兆円の大台に乗った。同3%増の2兆4675億円となった営業利益の改善要因で最も大きかったのは欧州市場での復調だが、景気が停滞する中国で着実に販売台数を積み上げていることが注目される。米中貿易戦争で米国からの自動車出荷が抑えられる中、日本から輸出する高級車「レクサス」の躍進などで存在感を高めている。

 「想定以上に伸びている」。決算発表の前日7日、トヨタが発表した4月の中国での新車販売台数に市場がざわついた。18年4月と比較して20%増の14万2600台。前年同月からのプラスは14カ月連続だが、最近の伸びは数%にとどまっていた。

 18年に新車の年間販売台数が28年ぶりのマイナスとなった中国。在庫の解消や減税措置もあって「19年の夏頃からは景気が戻ってくるのではないか」(アナリスト)といった期待感はあるが、過熱する米中貿易戦争を横目に、消費者心理の冷え込みは深い。

 その中でトヨタは18年度、中国で営業利益と持分法投資損益を合わせて2555億円の利益を稼いだ。「一人勝ち」に近い状況下で、伸び幅が際立つのがレクサスだ。18年の販売台数は前年比21%増の16万500台となり、19年4月の単月では前年同月比46%増の2万1800台と加速。米国工場から主要車を輸出する独ダイムラーや独BMWが関税増の影響をもろに受ける中で「高級車市場で、相対的にレクサスのお得感が広がっている」(同)。

 トヨタは中国での出遅れが指摘されてきた。1980年代前半、中国政府から技術協力を要請された際に前向きに対応しなかったことが原因とされ、小林耕士副社長も「我々は周回遅れ」と認める。ただ2018年5月に来日した李克強首相が北海道のトヨタ関連施設を視察するなど最近の関係は良好。今後、EV(電気自動車)など環境対応車を相次いで投入し、清華大学とクルマや水素エネルギーなどの共同研究に取り組むなどさらなる浸透を図る。

 新車販売を中国に依存してきた欧州大手は、同国の景気減速が打撃となり、直近の業績を落とした。ただ、トヨタにとってシェア5%ほどの中国はまだ「未開の地」に近い。つまり、伸びしろがあるという見立てで「一挙に増やすのは難しいが、お客さんは増える。じわじわ、コツコツやっていきたい」(小林副社長)という。

 先進技術の導入に躍起な中国では、「大変革期」(豊田章男社長)にある自動車業界のイノベーションでも一歩前を進みつつある。「中国では他社に比べ、改善の余地があったと思っている」(同)という反省を生かすことができれば、「周回遅れ」は思いの外、強みになるかもしれない。

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